<速報>2006年度第2期麻疹・風疹ワクチン接種に関する全国調査 
−最終評価 (第2報:2007年9月25日集計)−

  2007年8月21日に、同年8月14日までに回答のあったすべての自治体の接種率を都道府県ごとに表1〜表47として示し、ホームページに掲載したところ、さらに9つの自治体から回答があったため、それらの自治体が所属する北海道青森県群馬県東京都石川県京都府広島県に関しては、再集計したものを「第2報:2007年9月25日現在」として掲載した。それに伴い、表I表1、表2、表10、表13、表17、表26、表34も「第2報:2007年9月25日現在」の集計として、更新した。

2006年6月2日から、1歳児(第1期)と5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間にあたるもの(第2期)を対象に、麻疹風疹混合ワクチン(以下MRワクチン)を用いた2回の定期接種が開始された。我々は、全国の市町村特別区(以下自治体)における接種率の現状を把握する目的で、「2006年度第2期麻疹・風疹ワクチン接種に関する全国調査」を2006年10月1日現在と、2007年3月31日現在の2回にわたり実施した。2006年10月1日現在の中間評価の結果は、IASR Vol.28 No.3等において報告したが、今回は、2007年3月31日現在の最終評価の結果に関して報告する。

方法は、往復はがきを用いた質問票調査で、全国1,828自治体を対象に、2006年10月1日以降2007年3月31日までに実施した対象者への周知方法、2007年度小学校入学予定人口、接種者数(第2期MRワクチン、第2期麻疹単抗原ワクチン、第2期風疹単抗原ワクチン)、同対象者への今年度の経過措置の有無に関して、2007年5月16日に調査票を配布し、回収した。

2007年9月25日までに1,512自治体(82.7%)から回答を得た。

2006年10月1日〜2007年3月31日までに行った周知に関する質問では、有効回答数1,507(82.4%)のうち、対象者に何らかの周知をした自治体は1,440(95.6%)であった。周知方法としては「個別通知」が最多(1,043、72.4%)であった (図1)。

接種率に関する有効回答数は1,503(82.2%)で、2006年度第2期対象者における麻疹を含むワクチンの接種率[(第2期MRワクチン接種者数+第2期麻疹単抗原ワクチン接種者数)/2007年度小学校入学予定人口]は、中間評価から50.5ポイント増の79.9%、風疹を含むワクチンの接種率[(第2期MRワクチン接種者数+第2期風疹単抗原ワクチン接種者数)/2007年度小学校入学予定人口]は、中間評価から51.3ポイント増の81.2%であった。

接種したワクチンの種類を見ると、麻疹を含むワクチンのうち99.7%、風疹を含むワクチンのうち98.0%をMRワクチンが占めていた (図2)。第2期MRワクチンの接種率で各都道府県を比較したところ(表I)、最高値は福井県91.4%、最低値は山梨県66.5%であった。

麻疹を含むワクチンの接種率が95%以上を示した自治体が全国で216あったものの、50%以下である自治体が15あった。2007年9月25日までに回答のあったすべての自治体の接種率を都道府県ごとに表1〜表47として示した。

さらに、同対象者における今年度の経過措置の有無に関しては、有効回答数1,490(81.5%)のうち、1,285(86.2%)が「実施する予定はない」と回答し、「実施している」または「実施していないが予定している」と回答した自治体は162(10.9%)という結果であった。

接種率の最終評価が中間評価より約50ポイント増加したことは、各自治体における接種率向上に向けた働きかけの多大なる努力の結果と考える。一方で、2012年の麻疹排除に向けては、2回の定期接種それぞれにおいて95%以上の接種率の確保・維持が必要とされる。2006年度感染症流行予測調査によれば、第1期の麻疹を含むワクチン接種率は約83%で、2歳になると約97%となる。2006年度第2期対象者においては、全国的には約8割の接種率であり、95%以上の接種率を記録した自治体は全国の一割強であり、さらなる努力が必要と考えられた。

2007年8月10日に厚生労働省「第16回予防接種に関する検討会」から提出された “麻しん排除計画案”では、第1期、第2期に加えて、来年度から5年間の年限で中学1年生に相当する世代と高校3年生に相当する世代もMRワクチンを使用した2回目の定期接種の対象として積極的に接種勧奨を行うこと、麻疹サーベイランスの全数把握体制への変更、国および地方自治体それぞれのレベルにおける「麻しん対策委員会」を設置すること等が盛り込まれている。

国をあげた麻疹対策がいよいよ本格化する中、国および都道府県の積極的な支援の下、各自治体において、対象者一人ひとりに情報が行き届くきめ細やかな対応、接種を受けやすい環境の整備、それを可能にする予算確保等が求められる。我々公衆衛生従事者、医療従事者が目的意識を共有し、連携を強化した上で、それぞれの役割をさらにいっそう遂行することが重要である。

なお本研究は、厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)「予防接種で予防可能疾患の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究」 (主任研究者:岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター)に基づいて実施されたものであり、本調査にご協力いただいた自治体の皆様にお礼を申し上げる。加えて、まだご返送いただいていない自治体においては、引き続きご協力いただければ幸甚である。

(下線は、第2報の再集計により、数値が変更された部分である。)

国立感染症研究所感染症情報センター 上野久美 多屋馨子 岡部信彦


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