<速報> 2007年シーズンにおけるヘルパンギーナ患者および手足口病患者からのエンテロウイルス検出状況 −神奈川県

神奈川県域における2007年シーズンのヘルパンギーナ患者および手足口病患者の発生動向およびウイルス検出状況を報告する。

1.ヘルパンギーナ患者の発生動向およびウイルス検出状況
2007年の神奈川県域(横浜市、川崎市を除く)におけるヘルパンギーナの週別患者報告数は、第25週(6/18〜6/24)に定点当たり1.0人を超え、第30週(7/23〜7/29)に6.82人とピークを迎えたが、第35週(8/27〜9/2)においても1.35人と流行が続いている。

2007年1月〜8月末までに、神奈川県域(横浜市、川崎市、横須賀市、相模原市、藤沢市を除く)の病原体定点医療機関から搬入されたヘルパンギーナ患者検体の咽頭ぬぐい液46件について、6種類(RD-18S、HeLa、Vero、HEp-2、LLC-MK2、VeroE6細胞)の培養細胞および哺乳マウスを用いてウイルス分離を行ったところ、現在までにコクサッキーウイルス(C)A10型が14株、A5型が2株、A16型が1株、B2型が1株、B5型が2株、エンテロウイルス以外では単純ヒトヘルペスウイルス1型(HSV-1)が2株分離された。このことから今シーズンのヘルパンギーナ流行の主因ウイルスはCA10と推測された。年別による流行状況および主な分離ウイルスをみると、定点あたり報告数のピークは2007年も平年とほぼ同様であったが、主因ウイルスとなったCA10は4年ぶりの流行であった。ヘルパンギーナは病因となるA群コクサッキーウイルスの血清型が多いことから、毎年主流ウイルスの血清型が入れ替わり、ほぼ一定規模以上の流行を引き起こしているものと思われた(表1)。

2.手足口病患者の流行状況およびウイルス検出状況
手足口病の週別患者報告数は、第27週(7/2〜7/8)に定点当たり1.0人を超え、第30週(7/23〜7/29)に3.05人と比較的中規模なピークを迎え、第33週(8/13〜8/19)には定点当たり1.0を下回った。しかし地域によって局地的流行が見られ、小田原地区では第17週(4/23〜4/29)から定点当たり1.0人前後と継続的に流行が見られ、第30週(7/23〜7/29)には8.50人とピークを迎えた。また、秦野地区、厚木地区では、第26週(6/25〜7/1)あたりから流行がみられ、第30週には秦野地区で12.50人、厚木地区で5.55人とピークとなり、第35週(8/27〜9/2)においても流行が続いている。

病原体定点医療機関から搬入された手足口病患者検体の咽頭ぬぐい液48件について上記6種類の培養細胞および哺乳マウスを用いてウイルス分離を行ったところ、現在までにエンテロウイルス(EV)71型が19株、CA16が10株、CA10が4株、CA5が1株、エンテロウイルス以外ではCA16との重複感染でアデノウイルス2型が1株、ワクチン接種後に分離されたポリオウイルス1型が1株分離された。このことから今シーズンの手足口病流行はEV71とCA16による混合流行と推測された。特に4月下旬から流行が見られた小田原地区では、7月上旬までに搬入された手足口病検体からEV71が分離されており、その後はEV71とCA16の両方が分離されるようになった。従って、小田原地区の第17週からの局地流行はEV71によるものと推測された。EV71は神奈川県域においては2003年、2005年、2007年と1年おきに流行がみられている(表2)。EV71は局地的に継続的な流行を引き起こす可能性があり、また重篤な中枢神経性の合併症を引き起こす場合があることから、今後もその発生動向には注意が必要である。

神奈川県衛生研究所微生物部
佐野貴子 齋藤隆行 近藤真規子 渡邉寿美 尾上洋一
神奈川県感染症情報センター
近内美乃里 佐藤善博 折原直美


速報記事(ウイルス)のページに戻る
速報記事(細菌)のページへ




ホームへ戻る