<速報> インフルエンザ脳症が疑われた小児からのインフルエンザウイルスの分離−秋田市

2005年3月上旬〜中旬にかけて、秋田市の医療機関(小児科)でインフルエンザ脳症と診断された患者から採取された検体を用いて当所でウイルス分離を実施した結果、インフルエンザウイルスA/H3N2型およびB型が分離されたのでその概要を報告する。

症例1(1歳女児):2005年3月5日ごろ発熱あり、3月6日に救急外来受診中に間代性けいれんが3分出現、その後意識障害(JCS100〜200)が続き入院した。入院時の症状は、発熱39℃、意識清明、項部硬直(−)および呼吸音静であったが、入院時に頭部コンピュータ断層撮影法(CT)で脳浮腫がみられたことからインフルエンザ脳症と考えられた。入院後、輸液管理、グリセオール投与、およびタミフル内服開始等により3月8日解熱した。3月10日に頭部CTで脳浮腫の改善があり、3月12日に退院した。同患者の鼻汁(3月7日採取)を用いてウイルス分離(MDCK)を実施した結果、インフルエンザウイルスB型が分離された。

症例2(9歳男児):2005年3月7日発熱あり、3月8日に開業医(小児科)を受診、タミフル処方を受けたが40℃の高熱が続き、夕方3回の嘔吐がみられた。つじつまのあわないことを言うようになり、3月8日に救急外来受診し入院した。入院時の症状は、意識傾眠、項部硬直(−)、および呼吸音静であった。頭部CTで脳浮腫がみられたことからインフルエンザ脳症と考えられた。入院後、輸液管理、グリセオール投与、およびタミフル内服開始等により3月9日の朝には意識清明となった。また、3月10日に解熱した。3月11日に頭部CTで脳浮腫の改善があり、3月13日に退院した。同患者の鼻汁(3月9日採取)からインフルエンザウイルスB型が分離された。

症例3(1歳男児):2005年3月7日に発熱39℃、急に啼泣後に全身性間代性けいれん(1分)、および意識障害遷延(−)にて救急受診し入院した。入院時の症状は、意識清明、項部硬直(−)、および呼吸音静であった。入院後再び全身性間代性けいれんが出現し、頭部CTで脳浮腫がみられたことからインフルエンザ脳症と考えられた。入院後、輸液管理、タミフル内服開始、およびグリセオール投与開始等により3月8日に解熱した。3月10日に頭部CTで脳浮腫の改善があり、3月12日退院した。同患者の鼻汁(3月8日採取)からインフルエンザウイルスA/H3N2型が分離された。

症例4(6歳女児):2005年3月10日の夕方から発熱40℃、3月11日に全身性硬直性けいれん(3分)にて救急搬送され入院した。入院時の症状は、意識清明、項部硬直(−)、および呼吸音静であった。入院時の頭部CTで脳浮腫等がみられたことからインフルエンザ脳症と考えられた。入院後、輸液管理、タミフル内服開始、およびグリセオール投与開始等により3月12日に解熱した。3月15日に頭部CTで脳浮腫の改善があり、3月16日に退院した。同患者の鼻汁(3月11日採取)からインフルエンザウイルスA/H3N2型が分離された。

症例5(5歳女児):2005年3月11日38.6℃の発熱。食欲なく、ぐったりして受診。インフルエンザA抗原陽性、入院し、輸液とタミフル内服にて治療。3月12日、意識不明瞭、反応性低下あり、名前と年齢答えるが、場所が不正確。軽度の意識障害と判断。手足のぴくつきもあり、頭部CT施行し、脳浮腫の所見あり、インフルエンザ脳症の合併と診断。グリセオールとデカドロン開始。同日意識は清明になり、3月13日解熱。3月16日の頭部CTでは脳浮腫の所見が改善。3月23日に退院した。同患者の鼻汁(3月16日採取)からインフルエンザウイルスA/H3N2型が分離された。

また、当所で実施している感染症発生動向調査の病原体検出状況(2月8日〜3月24日現在)では、県内の医療機関のインフルエンザ患者から採取した検体からインフルエンザウイルスA/H3N2型が17株、同A/H1N1型が1株、およびB型が30株分離されている。

一方、秋田県感染症情報センターから報告された2005年の秋田市におけるインフルエンザの発生規模(一定点あたりの患者数)をみると、第2週(1月10日〜1月16日)1人、第3週(1月17日〜1月23日)1.82人、第4週(1月24日〜1月30日)2.55人、第5週(1月31日〜2月6日)6.55人、第6週(2月7日〜2月13日) 14.55人、第7週(2月14日〜2月20日) 33.55人、第8週(2月21日〜2月27日) 75.73人、第9週(2月28日〜3月6日)120.27人、第10週(3月7日〜3月13日) 142人、第11週(3月14日〜3月20日) 116人、および第12週(3月21日〜3月27日) 74.55人で、ピークは第10週であった。また、今回のインフルエンザ脳症患者は、ピークを示した第10週でほぼ発症がみられるとともに、これらの患者からA/H3N2型およびB型の2種類のインフルエンザウイルスが分離されたことから第10週目のインフルエンザの発生規模の大きさが裏付けられた。

秋田県衛生科学研究所
原田誠三郎 安部真理子 佐藤寛子 斎藤博之 八幡裕一郎 笹嶋 肇
佐藤智子  鈴木紀行
秋田組合総合病院小児科  小松和男


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