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Vol.17 (1996/12[202])

<外国情報>
WHOとIUATLD(結核と肺疾患に対する国際連合)による薬剤耐性結核監視グローバルプロジェクト


 薬剤耐性結核菌の広がりは,世界的な問題である。アメリカやヨーロッパではHIV感染者間に多剤耐性結核菌が広がっており,また,アジアとアフリカでは現在特に耐性菌が多くなっているという報告がある。世界全体の薬剤耐性結核菌の適切な調査報告はこれまで成功していなかった。その理由は,多くの国の結核菌培養施設が不十分であること,感受性テストを行う能力がないことや,監視機能がないこと,調査にかたよりがあることなどである。最重要抗結核菌であるイソニアジドとリファンピシンに対する耐性菌の広がりは結核のコントロールからも重大である。その国の耐性菌のレベルは国家結核プロジェクト遂行能力のインジケーターであるようにも思われる。

 1994年にWHOとIUATLDは,協力して薬剤耐性結核菌監視のグローバルプロジェクトを開始した。目的は薬剤耐性結核菌のデータを集めることと,それぞれの国が薬剤耐性の監視方式を開発し,検査診断能を改善し,治療政策を改めることである。現在,検査室ネットワークが20箇所,WHOとIUATLDにより確立されている。それは,カナダ,アメリカ,アルゼンチン,ベルギー,フランス,ドイツ,オランダ,ポルトガル,スペイン,イギリス,アルジェリア,南アフリカ,インド,日本,韓国とオーストラリアである。それぞれの検査室でストレプトマイシン,イソニアジド,リファンピシンとエタンブトールについて鋭敏度,耐性,感受性についてテストした。感受性テストはゴールドスタンダードと比較した。現在データ分析の段階であり,さらに1996〜97年次の計画を進めている。このプロジェクトの結論として,いくつかの国が1997年までに信頼できるデータをまとめ,グローバルな報告がされるであろう。

(WHO,WER,71,No.38,281,1996)






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