HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.17 (1996/5[195])

<国内情報>
札幌市におけるアデノウイルス7型の分離


 本月報によるとこれまで分離例が稀であったアデノウイルス7型(以下Ad7)の分離報告が増加している。全国的にAd7が検出される患者はほとんどが小児で急性呼吸器疾患からの分離例である。札幌市において,1995(平成7)年10月以降採取の結膜擦過物,咽頭ぬぐい液から15株のAd7を分離したので報告する。

 Ad7を分離した患者の年齢は特に小児に偏ることなく4歳〜66歳,臨床診断名は流行性角結膜炎,咽頭結膜熱を含む結膜炎6例,インフルエンザ様疾患9例,合計15例であった。患者の症状で特徴的なのは,インフルエンザ様疾患では38℃以上の発熱を伴うことであった。

 ウイルスの分離は結膜擦過物ではKB,HeLa,RD-18S,咽頭ぬぐい液ではKB,MDCKを用いて行い,最初に分離陽性となったのはKB2〜5代目であった。HeLaではさらに1代,RD-18Sではさらに1〜2代の継代により分離陽性となり,使用した細胞の中ではKBが最も感受性が良かった。予研分与の抗Ad血清および市販抗Ad血清(デンカ生研)を用いた中和試験の結果,ともに抗Ad7血清(10U)で中和された。また,この15株については抗Ad11血清(予研分与,5U)との交差反応はみられなかった。Ad7分離株はウイルス分離・同定とも比較的容易であったことから最近まで見逃されてきたとは考えにくく,Ad7に対する中和抗体保有率は極めて低いとの報告(野田ら,本月報Vol.16,No.11)があることから,今後も分離例が増加するものと考えられる。



札幌市衛生研究所
吉田靖宏 布目博子 大木忠士 佐藤泰昌 菊地由生子


Ad-7 検出事例 札幌市衛生研究所(H8.4.12現在)





前へ 次へ
copyright
IASR