HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.17 (1996/4[194])

<外国情報>
ウシ海綿状脳症(狂牛病)―英国


 英国におけるウシ海綿状脳症(BSE)は1988年7月に履行された最初の制圧処置で明らかに減少している。1995年に制圧強化のため多くの変更があり,少量の感染物資でさえ家畜牛の飼料に入りこまないようにした。制圧処置は以下の通り,(1)動物死体の脂肪利用の基準:動物死体から製造される脂肪精製価過程を調査し,反芻動物由来の死体の加工処理には熱処理を採用した。英国の脂肪精製工場は1995年1月1日までに新しい基準に従った。(2)specified bovine offals(SBOs;牛の特定の屑部分,下記参照)の同定法:SBOsは死体から取り除き処分されねばならない(飼料に使用しない場合は例外あり)。1995年4月1日から特有の色素Patent Blue Vの使用が強制され,その色によりSBOsを同定し,区別する。飼料にSBOsの使用禁止を強制。(3)SBOsの取り扱いと処分の規則強化:SBOsが厳密に除かれずに,非SBOs物質と一緒に加工処理されると,感染物質が動物飼料中に入りこむ可能性がある。1990年9月SBOs管理が強化されたが,その後生まれた家畜牛がBSEを起こしたという疫学的および他の証拠があり,95年8月15日にさらに次の変更があった。(a)全脂肪精製工場,頭蓋骨粉製造工場,ごみ焼却炉,SBOsの集積センターは認可制になる;1996年2月15日から発効。(b)記録保持の徹底,(c)6カ月以上齢の牛の頭蓋からの脳と目の除去禁止;頭蓋の脳と目を含む部分は頭肉と舌肉を除いた後,SBOsとして処分しなければならない。(d)屠殺場以外での牛脊柱からの脊髄除去の禁止。

 WER編集部註:1986年11月〜1995年5月12日までに英国で149,764例のBSEが33,459群で確認された。1995年5月までに英国以外でBSEが報告されたのは10カ国。スクレイピーから類推すると,BSE因子が増殖し,人間への伝染に関係する牛の組織は,脳,脊髄,扁桃腺,脾臓,胸腺,腸(これはSBOsとして知られている)で,今までは脳と脊髄のみでBSE感染が検出されている。人間の食料としてのSBOs使用禁止は,1989年に英国で,後にBSEの確認された国で行われ,感染の有無にかかわらず,すべての家畜牛に適用され,唯一の例外は6カ月以下の仔牛である。筋肉を含む他の組織と牛乳は,非経口接種で感染性を示さず,経口接種でも感染効率が低いため,全く感染性を示さなかった。熱や化学処理のような食品化工程技術では感染性因子を十分に不活化しないので,食品媒介伝染防止のため健康な動物を使用し,病気の発生率の高い国ではSBOsの使用を避ける。医原性伝染に関しては,医薬品製造の材料を注意深く選び,牛由来の材料や試薬は安全性を保証する。医薬品の危険性査定は製造に使用した材料,製造過程,投与量や経路などを考慮すべきである。

 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の疫学調査は英国とEU各国で継続中で,CJD死亡者の職業歴は1990年以来英国で調査されている。casecontrol研究で,職業や植物摂取との関連は明らかになっていないが,BSEの潜状期の長さを考えて,公衆衛生上の危険性を無視できないので,疫学調査は継続すべきである。

 *WHOは1995年5月17〜19日,ジュネーブでヒトおよび動物の伝染性海綿状脳症に関する公衆衛生問題上の会議を組織した。会議の報告は下記から入手可能。The Director, Division of Emerging and other Communicable Diseases Surveillance and Control, WHO, 1211, Geneva 27, Switzerland.

(WHO,WER,71,No.11,83,1996)






前へ 次へ
copyright
IASR