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Vol.17 (1996/3[193])

<国内情報>
わが国におけるHIV感染の状況について(平成7年12月末現在)


厚生省エイズ結核感染症課



T. エイズ患者およびHIV感染者の状況(法施行前・後の累計)

1. 現状(表1)

 (1)平成7年12月末までに報告された累計患者数は1,154人であり,その感染原因別の内訳は,異性間の性的接触213人,同性間の性的接触179人,静注薬物濫用5人,母子感染7人,凝固因子製剤582人,その他16人,不明152人である。

 (2) 累計HIV感染者数は3,524人であり,その内訳は,異性間の性的接触866人,同性間の性的接触350人,静注薬物濫用11人,母子感染9人,凝固因子製剤1,806人,その他37人,不明445人である。

 (3) 累計死亡者数は709人であり,その内訳は,異性間の性的接触107人,同性間の性的接触97人,静注薬物濫用3人,母子感染5人,凝固因子製剤402人,その他12人,不明83人である。

2. 年次推移(表2)

 (1)平成7年中に報告されたエイズ患者およびHIV感染者(以下「患者・感染者」という。)は446人であり,前年に引き続き増加傾向を示している。

 (2)性別では,男性については平成2年から増加傾向で推移しており,前年の290人から平成7年の335人へと増加した。女性については平成4年の291人を頂点として減少を続け,平成7年においては前年の144人から33人少ない111人となっている。

 (3)国籍別では,平成4年の日本人男性の2倍近くの報告のあった外国人女性は年々減少し,平成7年においては日本人男性の3分の1を下回る報告となり,外国人男性とほぼ並ぶに至った。これに対して日本人男性は年々増加を続け,平成7年においては255人と年間の全報告数の6割近くを占めている。

 (4)感染原因別では,近年,男性の異性間の性的接触によるものが増加傾向にあり,特に日本人男性については対前年比50%増の153人が平成7年に報告されている。また,同性間の性的接触によるものについては前年122人と2倍近くに急増したが,平成7年には108人と減少した。

 (5)感染の拡大に伴って,患者報告数は年々増加しており,前年の136人から平成7年の169人へと24.3%の増加となった。

3. 報告地域(表3)

 患者・感染者(法施行前・後の累計)を都道府県別にみると,すべての都道府県から報告されているが,そのうち,67.4%が関東地方からの報告となっている。

U. 法施行後の患者・感染者の状況

1. 性別構成(表4)

 「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」(エイズ予防法。以下「法」という。)施行後(平成元年2月17日〜)から平成7年末までに報告された患者・感染者2,151人中,男性は1,279人(59.5%),女性は872人(40.5%)である。このうち,日本人では1,104人中,男性945人(85.6%),女性159人(14.4%)と男性が多いが,これに対して,外国人では,1,047人中,男性334人(31.9%),女性713人(68.1%)と,女性の割合が高くなっている。

2. 感染原因(表5)

 法施行後に報告された患者・感染者を感染原因別にみると,異性間の性的接触が最も多く全体の48.0%を占め,ついで同性間の性的接触が21.2%となっている。

 これを性・国籍別にみると,日本人男性では,患者・感染者945人のうち,異性間の性的接触による感染が339人(42.2%),同性間の性的接触が392人(41.5%)とほぼ同数であるが,外国人男性では患者・感染者334人のうち異性間の性的接触が112人(33.5%),同性間の性的接触が65人(19.5%)となっており,異性間の性的接触による感染が若干多い。

 女性においては,異性間の性的接触によるものが,日本人の患者・感染者159人のうち125人(78.6%),外国人713人のうち396人(55.5%)である。

3. 年齢構成(表6)

 法施行後に報告された患者・感染者の年齢構成をみると,20歳代と30歳代で全体の68.7%を占めている。

 性別でみると,男性で最も多いのが30歳代で32.2%を占め,20歳代および40歳代が各々26.3%,25.9%を占めている。これに対して,女性は20歳代が72.1%を占めており,より若い世代に感染が集中している。

 次にこれを感染原因別についてみると,男性では異性間の性的接触によるものが最も多いのは30歳代であり,同性間の性的接触によるものは20歳代,30歳代,40歳代がほぼ同数である。また,女性では異性間の性的接触によるものは20歳代が最も多い。

 さらに年齢構成について年次推移をみると,男性については20歳以上のどの年齢階層も増加しているが,女性については,特に外国人女性の減少により20歳代の報告数が平成4年を頂点として年々減少している。

4. 感染地域(表7表8)

 異性間の性的接触による感染について感染地域をみると,日本人では男女とも国内での感染の方が海外での感染よりも多く,特に性的接触による男性の感染増が著しい。外国人では男性においては海外での感染が多いが,女性においては国内での感染と海外での感染がほぼ同数報告されている。

 同性間の性的接触の感染地域については,国内における感染が多い。



表1. エイズ患者・HIV感染者・死亡者の感染原因別累計数(平成7年12月末現在)
表2. 患者・感染者数の性・感染原因別年次推移(平成7年12月末現在)
表2−1. エイズ患者数の性・感染原因別年次推移(平成7年12月末現在)
表4. 患者・感染者の国籍・性別報告数(法施行後累計)(平成7年12月末現在)
表5. 患者・感染者の性・国籍・感染原因別報告数(法施行後累計)(平成7年12月末現在)
表6. 患者・感染者の性・年齢階級別報告数(法施行後累計)(平成7年12月末現在)
表7. 異性間の性的接触における患者・感染者の性・感染地域別年次推移(法施行後)(平成7年12月末現在)
表8. 同性間の性的接触における患者・感染者数の国籍・感染地域別年次推移(法施行後)(平成7年12月末現在)





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