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Vol.17 (1996/3[193])

<国内情報>
千葉市内の福祉更生施設で集団発生したA型肝炎−患者便からのPCRによるHAV遺伝子検出


 1995年7〜8月にかけて,千葉市内の入所者60名,通所者16名,職員36名(3寮6クラス,7作業班)からなる知的障害者の福祉更生施設でA型肝炎の集団発生があり,職員1名を含む7名が発症した(表)。施設の性格を考慮し,予防措置として8月25日に,発病者を除く施設内の者全員にガンマ・グロブリンを投与した。その結果,翌26日に最終症例Gが発症した後感染は終息した。

 初発患者AとBは,生活寮が同じで,また作業場でも席が隣同士のことからAからBに感染したものと考えられたが,それ以後の感染経路については,不顕性感染をおこした者についての確認ができていないため確定できなかった。またAの感染経路についても特定できなかった。

 患者は,GOT,GPT値の上昇が認められ,臨床所見からA型肝炎と診断された。検査した6件すべてから特異IgM抗体が検出され,A型肝炎ウイルス(HAV)に感染したことが確認された。発症後1週間以内に採取された糞便についてデンカ生研製キット(HAT-EIA「生研」)を変法で使用し,ELISAによる抗原検出を行ったところ,5件中3件からHAV抗原が検出された。

 次に,患者糞便よりHAV遺伝子のVP1/2A領域の検出を試みた。電子顕微鏡試料と同様の方法で濃縮精製した糞便からCTAB法でRNAを抽出した。P2プライマー(5'-CCAAGAAACCTTCATTATTTCATG-3')で逆転写反応後,P1プライマー(5'-ATTCAGATTAGACTGCCTTGGTA-3')で増幅させたところ,5件中3件から498bpのバンドが検出された。の内側のプライマーで2nd PCRを行ったところ,5件すべてに267bpのバンドが検出された。このPCR産物をダイレクトシークエンスし,解析領域であるVP1/2A領域168塩基の配列を調べた結果,遺伝子型IAと98%のホモロジーを有していた。



千葉市環境保健研究所 北橋智子 田中俊光 中村栄子 長谷川修司
千葉市保健所 石川 洋


表 血清検査と抗原検出結果





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