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Vol.16 (1995/11[189])

<国内情報>
高知市において発生した紅斑熱群リケッチア症について


 高知県においては1983年〜本年までに室戸病院の船戸らによって,65例の紅斑熱群リケッチア症が確認されており,全例が室戸市を中心とした発生であった。

 この度,高知市住民において1例の紅斑熱群リケッチア症を確認したので報告する。

(症例)

患者:高知市,47歳,男,銀行員

 1995年9月12日悪寒を伴って発熱し,近医を受診,カゼと診断され治療を受けたが改善せず,14日頃より全身に発疹が出現した。また,強い上肢部痛も加わった。15日市内の別の病院を受診,18日入院した。入院当日の生化学検査ではGOT265,GPT212,LDH1,327であった。15日以降スルペラゾンにて加療を行い,発赤疹徐々に消退し,22日にはGOT148,GPT181,LDH889となったが38℃近い熱は続いた。25日になって衛生研究所にリケッチア抗体検査を依頼,臨床症状と抗体検査結果から紅斑熱群リケッチア症と診断した。リンパ節腫脹,刺し口はともに認めなかった。25日からミノマイシンを投与,熱は26日より下降を始め27日には平熱となった。

 以上が経過であるが,抗体検査は長く続く高熱に悩んだ患者側からの申し出によるものであった。患者は室戸市の出身であり,9月3日帰省し昼頃から畑で草刈を行ったとの事であった。以前に隣家の女性が紅斑熱群リケッチア症に感染している事から,患者の母親が同症を疑い医師に申し出たとの事である。

 紅斑熱群リケッチア症患者の多い高知県であるが,室戸を一歩出ると,医師の関心も少なく,同症になかなか結びつかないのが現状である。今回のようなケースは今後もあると思われる。我々は高熱で長期に苦しむ患者を一日も早く解放するため一層啓蒙に努力したいと考えている。

 なお,抗体検査結果であるが,蛍光抗体法で行い,紅斑熱群リケッチア(YH株)に対する抗体はIgG,IgMともに640倍であった。ツツガムシに対する抗体は陰性であった。検査に使用したリケッチアのYH株は予研坪先生より,ツツガムシ(Gilliam,Karp,Kato)株は宮城県環保センター秋山先生より分与していただいた株を使用した。



高知県衛生研究所
千屋誠造 高橋 信 出口祐男
近森病院 山崎弘美 栄枝弘司
室戸病院 船戸豊彦 北村嘉男





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