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Vol.16 (1995/8[186])

<国内情報>
1995/96インフルエンザ流行季用ワクチン株


 1. A/ソ連型:A/山形/32/89(H1N1)200 CCA/ml相当量

 最近,ソ連型ウイルスは1988/89と1991/92流行シーズンを支配したが,この2つのシーズンに分離された流行株はいずれも1988/89の流行で主流となったA/山形/32/89株と同じ抗原性を有し,遺伝学的にもこのことが立証され,1991年以降のワクチン製造株としてこの株が使用されてきた。しかし,1992〜1994年2つのシーズンにおけるわが国の流行では,このウイルスは確認されなかったが,1994/95流行シーズンに12カ所(道,県)で,散発的な流行から約90株のソ連型ウイルスが分離された。これらの分離ウイルスの抗原性はA/山形/32/89株に極めて類似していた。さらに,海外の1993〜1995年流行シーズンにおいて,特にヨーロッパ,アメリカ,中国,シンガポールでもソ連型が確認されているが,これらもワクチン株であるA/山形/32/89株にその抗原性は類似しているという情報がもたらされている。仮に,1995/96シーズンにこれらのソ連型ウイルスが流行することがあっても,A/山形/32/89株で製造されたワクチンで十分防御できると予測される。

 2. A/香港型:A/北九州/159/93(H3N2):400 CCA/ml相当量

 香港型ウイルスは,1989/90,1990/91,1991/92,1992/93,1993/94,1994/95流行シーズンにA/ソ連型あるいはB型と混合,併合追従と様々な流行形式をとり毎年のように姿を現わしている。その間,1990/91流行の終盤に当時のワクチン株であるA/北京/352/89(H3N2)から8倍程度変異したA/滋賀/2/91(H3N2)株が出現した。そして1992/93の香港型の流行シーズンにはこのA/滋賀/2/91類似株が流行の主流を占めたが,このシーズン中期頃からこの株より16倍程度HAに対する抗原性が異なるA/北九州/159/93(H3N2)で代表される変異種ウイルスが流行の末期まで分離された。さらに,このウイルス株が分子進化学的解析から今後も流行すると推定され,1993/94シーズンに使用するワクチン製造株となった。このシーズンの流行は全国的に低調に終わったが,その主流は予測通りA/北九州/159/93類似株であった。しかし,これらの流行ウイルスの中にA/北九州/159/93株よりその抗原性が4倍程度変異したA/秋田/1/94(H3N2)で代表されるウイルスが4%程度混合していたが,1994/95シーズンで使用されたワクチン株は1993/94シーズンと同じ株を50 CCA/ml相当量増加して用いた。

 このシーズンも予測通り香港型の大規模な流行があり,その流行ウイルスの大部分はA/北九州/159/93類似株であった。しかし,A/秋田/1/94類似株やその抗原性がA/北九州/159/159/93ウイルスからA/秋田/1/94ウイルスに移行するのではないかと考えられる中間型も前シーズンに比べてかなり増えてきたこと,またこの両者の株間における交差中和能にやや差のあること,さらにA/秋田/1/94株に対するヒトの保有抗体が比較的低いことなど問題はあるが,海外の流行ウイルスなど国際情報を考慮すると今後もA/北九州/159/93ウイルスで代表されるA/香港型ウイルスが流行する可能性が考えられるため,前年度よりさらに抗原量を50 CCA/ml相当量増加したA/北九州/159/93株を継続して使用する。

 3. B型:B/三重/1/93:250 CCA/ml相当量

 1993/94流行シーズンに当時のワクチン株であったB/バンコク/163/90株から変異したB/三重/1/93株が流行ウイルスとなり,分子進化学的解析から今後もB/三重/1/93で代表されるB型ウイルスが流行する可能性が示唆され,1994/95シーズンのワクチン製造株となった。予想通りこのシーズンのB型流行ウイルスはB/三重/1/93類似株であった。

 本シーズンの製造株として国内および国外の情報から今後もB/三重/1/93で代表されるB型ウイルスの流行の可能性があること,WHOの推奨株であるB/北京/184/93株とB/三重/1/93株とその抗原性が類似していることなどから,前年度と同じ含有量で本年度も継続してB/三重/1/93株を採用する。



予研ウイルス第一部呼吸器系ウイルス室





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