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Vol.16 (1995/7[185])

<外国情報>
エボラ出血熱−ザイール


 1995年5月23日現在:疫学的調査により,キクウィトおよびその周辺地域で136名の患者が見出だされ,101名(74%)が死亡した。レトロスペクティブな調査により,1994年12月末,ある家族内(12名)で7名が発症していたということが分かった。キクウィト総合病院の医師により,1994年12月末に少なくとも1名の出血熱患者がいたことが確認されている。

 今回の流行の最初の症例は,36歳男性実験室労働者で,4月9日発熱,腹部症状で入院,手術後死亡。4月14日以降この患者を扱った医療従事者70名が次々と発病,死亡率は極めて高かった。5月9日に患者血液材料がCDCへ送られ,ELISA法,RT-PCR法によりエボラ陽性が確認された。ウイルスの糖蛋白領域の塩基配列を決めたところ,以前ザイールで分離されたエボラウイルスと非常に似ていた。流行はキクウィト総合病院からキクウィト西方100kmのマセンゴ病院へ飛び火した。キクウィトで罹患した患者のうち何人かは7つの村へ戻り,そこで死亡したが,これらの村からはまだ患者が出ていない。

 現在,第3および第4世代の流行がどこかで起こっているものと思われる。第1世代の流行はキクウィトの病院で,配偶者,親類縁者および病院のスタッフで,第2,第3世代は他の縁者および第1世代の友人で,第4世代は現在潜伏期にある者と考えられる。5月15日以来,活発なサーベイランスにより,疑似患者は家に隔離され,遺体は少なくとも10日間安全な状態に置かれた。従って家族間での感染は最小にとどめられ,家庭内での感染が第4世代の流行と思われる。

(WHO,WER,70,No.21,149,1995)

 5月30日現在:患者数が増加しているにもかかわらず,流行が下火になっている傾向がある。5月21日〜30日にかけて,新たな患者は13人にすぎず,28,29,30日には新たな患者は出ていない。現在までの総計は患者211名,うち164名死亡,致命率は78%である。

(WHO,WER,70,No.22,158,1995)

 6月7日現在:流行の急性期は終息した。6月7日に2名の新たな患者が出て,患者247名のうち201名(81%)が死亡。患者の85%がキクウィトで発生した。

(WHO,WER,70,No.23,168,1995)

 6月14日現在:6月6日以来,キクウィトでの発症が6例加わり,計282例となった。転帰の分かった279例のうち,222例(80%)が死亡。患者発生の最も多かったキクウィトに加え,バンドゥンドゥ州のKwilu地区の20の村でも症例が見つかった。しかし,これらの地点はいずれも流行のフォーカスとはなっておらず,症例の感染源はつきとめられた。現在,家庭内での新たな接触感染者の出現を防ぐこと,および病院内でスタッフや他の患者に伝播しないよう,安全な場所で適切な治療をすることが強調されている。噂や患者との接触者は引き続き追跡調査されている。今後数週間は小数例の発生が予想される。ウイルスベクターおよびウイルスリザーバーの同定作業も進行中である。

(WHO,WER,70,No.24,176,1995)

 6月21日現在:289例の報告があった。転帰の分かった286例のうち,228例(80%)が死亡。

(WHO,WER,70,No.25,182,1995)






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