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Vol.16 (1995/7[185])

<国内情報>
わが国における腸炎由来カンピロバクター血清型の検出動向−全国カンピロバクター・レファレンスセンターの集計結果から


 平成元(1988)年度に発足した厚生省「希少感染症診断技術向上事業」の一つとして活動することとなったカンピロバクター・レファレンスセンター事業は,国内で発生したカンピロバクター腸炎から分離された菌株の血清型別に係るレファレンス・サービスを行うことをその骨子としている。型別法としては,WHOが国際型別システムの一つとして推奨しているLiorの方式を採用,全国衛生微生物技術協議会のワーキンググループの検討を経て決定された代表的な30の血清型(うち,4血清型は東京都立衛生研究所のTCKシステムによる)に対する抗血清を用い,これまで全国6地区の衛生研究所に設置された7支部センター(秋田県,東京都,愛知県,大阪府,広島県,山口県,熊本県)の協力のもとに型別サービスを実施してきたところである。本号では,この事業開始以降本年5月までの8年間の活動で集積された型別結果の概略を紹介し,参考に供したい。

 この8年間に各支部センターにおいて型別に供された菌株は総計6,317株で,このうち1,398株は集団食中毒84事件(同期間に本邦で発生した事件の約半数に該当)に,また,残りの4,919株は散発下痢症に由来する。

 これら集団,散発分離株の主要検出血清型を別表に示す。集団事例では,検討した84事例中いずれかの血清型に型別されたものが,79事例で,このうち46事例は単一の血清型,残りの33事例は複数の血清型によると考えられるものであった。検出血清型は全体で19種にわたるが,主要なものは欧米でも高頻度であるとされるLIO 4,7,1,2型のほか,Liorの血清型には含まれていない,恐らくわが国に特有な血清型と思われるTCK1,12などで,毎年ほぼ全国的にコンスタントに検出されている。

 一方,散発事例株では,供試4,919株中その約72%にあたる3,545株が型別可能であったが,そのうち311株は同時に複数の因子血清に反応する,単一の血清型に判別不能な株であった。検出血清型は本システムで採用した30すべての血清型にわたっているが,この中にはこれまでの分離数が10株以内の検出頻度が極めて低いものも含まれる。毎年コンスタントに検出されている主要な血清型は集団事例と同様,LIO4,11,1,2,TCK1,12などであるが,これまでのところ,これら血清型の検出頻度に特記するほどの年次的,地域的な特徴は観察されていない。

 なお,これら型別成績の詳細については,現在感染症学雑誌に公表すべく準備中である(平成元〜2年の成績については既に感染症学雑誌,66:340-348,1992に発表済)。



カンピロバクター・レファレンスセンター
(東京都立衛生研究所 工藤泰雄 伊藤 武 斉藤香彦)


集団および散発下痢症由来株の主要検出血清型





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