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Vol.16 (1995/1[179])

<国内情報>
アデノウイルス7型による急性呼吸器感染症の多発例−愛知県


 1992年にウイルス検査を行った感染症サーベイランスの患者13名から,アデノウイルス(Ad)7型が分離された。Ad7は5歳以下の小児の肺炎の原因ウイルスとして重要であるが,わが国においては報告例が少なかった。

 ウイルス分離はHeLa,RD-18S細胞を用いて行った。ウイルスの同定には国立予防衛生研究所(予研)より分与された抗血清を使用し,中和法によって同定したが,最終的な同定の確認は予研に依頼した。

 Ad7が分離された患者の一覧表を表1に示した。Ad7が分離された13名のうち11名は単独のウイルスが分離されたが,1名は糞便からAd7,咽頭ぬぐい液からAd2が分離され,もう1名は咽頭ぬぐい液からCox. A10型と同時に分離された。

 Ad7が分離された患者の疾患名は,肺炎・下気道炎が最も多く6名,次いで咽頭結膜熱3名,上気道炎2名,流行性角結膜炎1名およびヘルパンギーナ1名であった(表2)。これらの患者のうち下痢を伴った者が3名,痙攣を伴った者が1名あった。

 諸外国の報告では,5歳以下の児童における肺炎の約20%はAd7が原因であると報告されている。今回の愛知県での多発例でも下気道炎あるいは肺炎の患者からの分離が最も多く,わが国においても肺炎の原因ウイルスとしての重要性を増すことと思われる。

 Ad7は,1992年の4月〜11月に1〜3件ずつ散発的に分離され,ピークは8〜9月で(表3),愛知県においては季節的には夏期に多発した。

 分離患者の年齢分布は0歳2名,2歳2名,4歳2名,5歳3名,6歳3名,34歳1名であった(表4)。患者の年齢は諸外国の例と同様にほとんどが6歳以下であった。

 患者の検体をみると,糞便11/12件から,咽頭ぬぐい液8/12件から,眼ぬぐい液1/1件からAd7が分離された(表5)。ウイルスは糞便からの分離率がもっとも高く,呼吸器疾患であっても,アデノウイルス,エンテロウイルスが疑われる場合は,糞便からのウイルス分離も試みるとウイルス分離がされる場合がある。

 Ad7に対する細胞感受性はRD-18S細胞からは20件分離されたが,HeLa細胞からは2件のみであった(表6)。RD-18S細胞はエコーウイルスのみならず,Ad7に対しても感受性があり,ウイルスの分離に有効であった。

 予研分与の抗血清を用いた中和試験によるウイルス同定に際して,Ad7抗血清の他に,Ad11抗血清によってもCPEが阻止され,当衛生研究所では同定には至らなかった。そこで最終的な同定確認は予研に依頼し,Ad7と確定した。この経験から,もし仮に同定に際してAd11抗血清を使用し,Ad7抗血清を使用していなかったら,Ad11と誤って同定している可能性がある。過去のAd11ウイルス分離株について,このようなことがなかったか確認する必要がある。

 Ad7はわが国では分離例数が少なく,今回の愛知県のように多発したことはなかった。今後,特に肺炎あるいは下気道炎の患者からのウイルス分離に際して,注意しなければならないウイルスの一つである。



愛知県衛生研究所 栄 賢司


表1. Adeno 7型ウイルス分離患者一覧表
表2. Adeno 7型ウイルスの疾患別分布
表3. Adeno 7型ウイルスの月別分離数
表4. Adeno 7型ウイルスの年齢別分布
表5. Adeno 7型ウイルスの検体別分離数
表6. Adeno 7型ウイルスの細胞別分離数





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