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Vol.16 (1995/1[179])

<国内情報>
Salmonella Enteritidisファージ型22による食中毒および食品からの分離状況−東京都


 1989〜93年の5年間に東京都内で発生したSalmonella Enteritidis(SE)食中毒95事例のファージ型(PT)は年次によってやや異なるが,その内訳はPT4 47事例,PT34 31事例,PT1 12事例,PT8 4事例およびPT5a 1事例であった。一方,1994年には22事例のSE食中毒があり,そのうち21事例は従来と同一ファージ型に該当したが,1事例はわが国ではこれまでに検出されていないPT22によるめずらしい事例であった。以下,本事例の概要について紹介する。

 本事例は,1994年8月26日〜31日にかけて,東京都下M市の保育園(園児108名,職員44名)で園児32名,職員6名,計38名が腹痛,下痢,発熱などの食中毒症状を呈して発症したもので,検便の結果,園児および職員148名中54名からSEが検出された。食中毒発生から細菌検査の開始まで長時間が経過していたため,原因食と疑われた8月24日の給食を検査することはできなかったが,当日の昼食の献立の原材料中にSE食中毒の原因が疑われる鶏卵や鶏肉が使用されていた。分離菌株5株について国立予防衛生研究所においてファージ型を検討した結果,全株ともPT22であった。

 当研究所では鶏卵,液卵,鶏肉,ウナギなど食品由来のSE74株を保存しており,これらについてもファージ型を調べた結果,PT1,PT4,PT34が大部分であった。PT22は1993年に鶏肉から分離された6株と,1994年にやはり鶏肉から分離された5株の計11株で,1993年以前には認められないファージ型であった。このPT22は米国やカナダではまだ報告されておらず,また,英国でも数株報告されているにすぎない世界的にもまれなファージ型であり,今後海外との関連を含めた感染経路等の調査を実施する必要があろう。



東京都立衛生研究所
楠  淳 柳川義勢 伊藤 武





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