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Vol.16 (1995/1[179])

<国内情報>
わが国初のSalmonella Enteritidisファージ型13a菌による集団食中毒−青森県


 1994年9月9日弘前市内の保育園から保健所に,9月2日〜7日にかけて園児15人が下痢,腹痛等を訴え医師の診察を受けたところ,9人からサルモネラ菌が検出されたとの連絡があり,保健所で医師に確認後,医師からの届け出がなされた。医師は当初,散発性の可能性もあるとの考えから要観察中としていたが,全職員の検便の実施も予定されていた。他に,有症者が10名(園児9名,職員1名)おり,7つの病院に分散して受診していたが,いずれも食中毒ではなく風邪や自家中毒と診断されていた。

 保健所での調査の結果,原因食品は9月1日の昼食が疑われ,患者は9月2日午後7時を初発として7日までに摂食者73名(職員11名,園児62名)中15名(発病率20.5%)を数えた。すべてが園児であり,平均潜伏時間は約63時間であった。また,11名の職員中10名には症状は見られなかったが,1名は有症者として扱われた。患者の症状は平均6回の下痢(100%),38〜39℃の発熱(93%),腹痛(27%)であり,嘔吐,吐き気,頭痛,悪寒等の症状は認められなかった。

 保育園の職員11名と園児63名(非摂食者1名を含む)の便について菌検索を行った結果,園児のうち患者15名全員,有症者9名中4名,非発症者39名中23名,ならびに職員のうち非発症者10名中4名の便からSalmonella Enteritidis(SE)が分離された。職員の有症者1名からはSEは分離されなかった。なお,排菌はすべて1カ月以内に停止した。次に,9月1日〜3日までの検食15検体について菌検索を行ったところ,1日昼食のシュウマイ,ジャガイモのベーコン炒め,メロンの増菌培養液からSEが分離された。これら食品の未開封の残品(冷凍食品)および同園の納入業者から購入した関連食品についても菌検索を行ったがSEは分離されなかった。著者らが分離した43株のファージ型(国立予防衛生研究所・中村明子博士実施)はすべて13aであった。なお,分離菌株は数十メガダルトンの単独のプラスミドを保有し,薬剤感受性試験では8種類の一濃度抗菌薬ディスク(SM,KM,GM,CP,TC,ABPC,NA,CER)に高い感受性を示した。

 今回確認されたファージ型13aは,現在アメリカでは多く分離されているが,わが国での集団食中毒における分離例は今回が初めてである。このため再度保育園に対する聞き取り調査を行った結果,6名の職員が本年1月から3日間ホンコンへ旅行しており,このうち1名が帰国後下痢症状を呈していたことが判明した。しかし,この職員は4月に既に辞職している。残る5名のうち今回の事例で2名からSEが分離されているが,これらの職員は帰国後体調も良好で,かなりの時間も経過しており,しかも園児と一緒に給食を摂食していることから,海外旅行による潜伏感染とは考えにくかった。また,同保育園ではイヌ,カメ,ニワトリ,金魚を飼育しており,これらからの感染の可能性も考えられたため,12月初めにこれら動物の排泄物等について菌検索を行ったがSEは分離されなかった。SEはこれまで鶏卵汚染との関連で注目されてきたが,今回新たな感染源の存在も示唆されるため,今後の動向について,その監視強化が必要である。



青森県環境保健センター
大友良光 野呂キョウ
弘前保健所
佐藤真理子 伊藤とし子 深尾隆史





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