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Vol.15 (1994/12[178])

<特集>
インフルエンザ 1993/94


1993/94シーズンのインフルエンザ流行の特徴は患者発生の規模が小さかったこと,ウイルスはA香港(H3N2)型が主で,B型が少数であったが,両型とも全国各地で分離されたことである。

感染症サーベイランスによる定点医療機関からの1993/94シーズンのインフルエンザ様疾患患者報告数は,1987年集計開始以来最低で(図1),1993年第35週〜1994年第34週までの累計報告数は一定点当たり39.7人であった(1992/93シーズンは275.9人)。患者発生の推移をみると,図1に示すように1994年第4週から徐々に増加,第10週に小さなピークを呈したのち減少した。

 「インフルエンザ様疾患発生報告」は学校等において集団発生による休校,学年閉鎖,学級閉鎖の措置が取られた際の患者数を,厚生省エイズ結核感染症課で集計している。この集計による1993/94シーズンの患者数は75,426人で,過去最低であった。また,13県では集団発生の報告がなかった。

 病原微生物検出情報に報告された1993/94シーズンのインフルエンザウイルス分離数は1,809で,過去最高であった前シーズン (本月報vol. 14,12参照) の約3分の1に減少した。前シーズンに引き続きA香港型とB型の混合流行であった (本号参照)

A香港型は5シーズン連続の流行で(図2),1993年12月に大阪 (本月報vol. 15,bQ参照) をはじめとして5機関で7株分離された後,全国に広がった。分離数は1994年3月にピークとなった後,4月には減少したが,5月に6機関で20株,6〜7月に石川で10株が分離されている(表1)。

 年齢別のA香港型分離例数は流行が大きかった前シーズンに比べ,1歳を除き各年齢とも減少したが,4〜9歳の減少が明らかであった(図3)。

 B型は1993年12月に徳島で2株,1994年2〜5月に25機関で96株,6月に横浜市と沖縄 (本号参照) で4株が分離された(表2)。5月以降にB型が分離された11機関中8機関では,この時期にA香港型は分離されていない。

 一方,Aソ連(H1N1)型は1992年4月以降分離されていなかったが,1994年6月に大阪で1980年以前の株(A/熊本/37/79,A/大阪/11/80)に抗原性が近い変異株2株が分離されている (本月報vol. 15,bX参照)

 感染症サーベイランスでは,流行状況や症状からインフルエンザウイルス感染が疑われる患者を「インフルエンザ様疾患」として報告しているため,他のウイルスによるかぜ症候群の症例も一部含まれる。1993/94シーズンに病原微生物検出情報に報告されたインフルエンザ様疾患患者1,409例からの検出ウイルスは,インフルエンザウイルス1,243,アデノウイルス96,エンテロウイルス49,単純ヘルペスウイルス9,パラインフルエンザウイルス6,ロタウイルス3,RSウイルス2,ムンプスウイルス1であり,インフルエンザウイルス以外のウイルスが計166例で12%を占めた(図4)。インフルエンザウイルス分離報告が少なかった1993/94シーズンのこの割合は,過去6シーズンの平均6.3%(856/13,620),流行の大きかった前シーズンの3.0%(119/3,991)に比べ高い。

インフルエンザワクチンは「一般的な臨時の予防接種」であったが,予防接種法改正により,1994年10月1日以降,同法対象外の任意接種となった。

 速報:1994/95シーズンに入って,前述の「インフルエンザ様疾患発生報告」には,10月末に北海道,11月に神奈川,滋賀での集団発生による休校・学級閉鎖が報告されているが(1994年11月26日現在),感染症サーベイランスによる患者報告数の動きはない。また,病原微生物検出情報へのインフルエンザウイルス検出報告もない(1994年12月5日現在)。



図1.インフルエンザ様疾患患者報告数の推移,1987〜1994年(感染症サーベイランス情報)
図2.インフルエンザウイルス月別検出数の推移,1982年9月〜1994年8月
表1.月別報告機関別インフルエンザウイルスA香港型検出数(1993年12月〜1994年7月)
図3.インフルエンザウイルスA香港型検出例の年齢分布(1993/94シーズンと1992/93シーズンの比較)
表2.月別報告機関別インフルエンザウイルスB型検出数(1993年12月〜1994年7月)
図4.インフルエンザ様疾患患者からのウイルス検出報告(1993年9月〜1994年8月)





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