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Vol.15 (1994/7[173])

<国内情報>
Chlamydia pneumoniaeの家族内感染例


呼吸器疾患を有する小児を対象にC. pneumoniae(C.p)の分離を行った。比較的長期間持続して分離し得た症例のなかで,家族内感染と思われる2症例を報告する(Case 1,Case 2)。症例はマイコプラズマ感染が否定され,IDEIAクラミジア法が陽性であるなど,C.pの関与が疑われた小児とその家族である。分離材料は鼻咽腔スワブで,培養は既報の手順(坂内久一他;臨床とウイルス,21巻4号,p. 258-261, 1993)で行った。

 Case 1は両親と子供の4人家族で女児(10歳,1992年5月初回採取)と弟(7歳)からC.pが分離された。女児は喘息の基礎疾患を有し,来院当日も激しい咳嗽を呈した。

 Case 2(4人家族)は母親を除く3人から分離(1992年12月初回採取)された。投薬後の一時期を除き,同一人から重複して分離された。

 ほとんどの検体スワブで3代目の培養2〜3日目から細胞変性効果を認め,培養の経過とともに細胞の脱落が進行した。しかし,未染色では封入体の確認は容易でなかった。分離された株は途中で消失することなく4〜6倍の伸展で良く増殖した。

 一方,抗体価の推移をみると,Case 1では家族全員が陽性を示し,特に発端者の女児は32→1024→128倍と高値を長期間持続した。Case 2はCase 1と同様,徐々に上昇しピーク値(1:1024)に達し,その後低下傾向を示した。臨床的には初診時に激しい咳嗽が全症例で認められたが,発熱を認めた症例はなく,胸部ラ音も1例認められたのみであった。いずれの症例もマクロライド系やテトラサイクリン系などの抗生物質により軽快した。

 これらは密接な環境下で引き起こされた家族内感染例であると思われる。



杏林大学保健学部公衆衛生教室 坂内 久一,菰田 照子
国立霞ヶ浦病院小児科 岩田 敏


Laboratory data for demonstration of outbreaks of C. pneumoniae infection in two families





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