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Vol.15 (1994/2[168])

<国内情報>
サルの条虫Bertiella studeriの人体感染例


 Bertiella属条虫はアジアやアフリカにおけるサルや類人猿に普通に見られる寄生虫で,B. studeriB. mucronataの2種類が知られているが,まれに人体にも感染することが報告されており,文献的には熱帯,亜熱帯諸国から1〜2例ずつ,その多くは子供における感染で,現在51例の患者報告が全世界からみられる(Kagei et al., 1992その後)。

 わが国でもサル類からの報告が既に幾つかなされており,その人体症例の発生する恐れは十分考えられていた。そのような中,1992年ならびに93年に相次いで次のような症例が報告された。

 本虫は中間宿主であるホコリダニを誤って経口摂取した場合に感染が生ずるため,患者の生活環境内にペット等として猿類が生息しており,Bertiellaの中間宿主であるダニを間違って経口的に摂取する可能性のある子供において多くの感染者が見られる。

 @1歳6ヵ月,女児,三重県在住。

  髄膜炎で入院した際,糞便と一緒に片節の排出があり本虫と同定されたので,ビチオノールで駆除した所,片節多数が排出された。ただし,頭節は発見されていない。

(小島ら,1992)

 A1歳11ヵ月,女児,大阪市在住。

  虫体排出が見られ,Bertiella属片節と鑑別されたので,ガストログラフィンで駆除を行った。多数の片節と頭節も発見できた。



(井関ら,1993)

Kagei, N. et al. (1992): Japa. J. Trop. Med. Hyg., 20 (2), 165-168

小島荘明ら(1992):寄生虫誌,41(増),82

井関基弘ら(1993):寄生虫誌,42(増),129



予研寄生動物部 影井 昇





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