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Vol.15 (1994/2[168])

<国内情報>
特殊浴場従事者からのヘルペスウイルス検出−川崎市


 近年,性風俗開放に伴って性感染症(STD)が増加の傾向にあり,特にSTDのひとつである単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型の感染による成人の陰部HSV感染症が,わが国においても増加している。

 そこで,我々は川崎および近郊居住者の陰部HSVの罹患状況を把握する目的で,市内医療機関に本症の疑いで来院した特殊浴場従事者を中心にHSVの検出を実施したので報告する。

 検査対象:1986年10月〜1993年5月にかけて市内歓楽街近くにあるK産婦人科医院を訪れた,主に本市および近郊に在住する特殊浴場従事者292名,市街地在住の一般家庭主婦41名,OL14名およびサーベイランス事業による成人男女79名を対象とした。

 HSVの検出はMicro Trak Herpes直接法を用い,落射型蛍光顕微鏡によって判定した。

 K産婦人科医院で採取した347検体中136検体(39%)からHSVが検出された。職業別の検出率ではOLが50%と最も高く,ついで主婦の46%,特殊浴場従事者の38%の順であった。年齢別にみると,いずれも若年齢層ほど高率を示したが,主婦では50歳以上の高年齢層においても54%の陽性者が認められた(表1)。

 型別によるHSVの検出率は特殊浴場従事者,主婦では2型がそれぞれ88%,84%と1型よりはるかに高率に検出されたが,OLでは逆に1型が57%と2型の43%より,わずかながら高い値を示した(表2)。

 一方,サーベイランス事業における調査では,79検体中39検体(49%)からHSVが検出され,性別では男性67%,女性44%と男性が女性より高い検出率であった。

 型別では男女とも1型が2型より検出率は高く,特に女性では1型が2型の約1.7倍であった(表3)。

 以上のようにハイリスクグループを中心とした女性の陰部HSV罹患調査では,若年齢層ほどHSV検出率は高い傾向を示した。また,50歳以上の主婦陽性者はすべて2型であった。再発例の場合,ほとんど2型であることが報告されており,若年時に感染し再発したものと考えられる。

 今回の我々の調査では予想に反し,HSVは特殊浴場従事者が主婦,OLに比べて低い検出率があった。現在,特殊浴場業界では,従事者に対し月1回ないしは2回,自主的にSTD検査を実施しており,感染源となる確率はきわめて低いと考えられる。

 また,口唇HSVといわれている1型が陰部から高率に検出されたことは,日本においても性行動の変化に伴うOral Sexなどによって1型に感染する機会が多くなっているものと推察される。



川崎市衛生研究所
春山 長治,清水 英明,赤尾 昭


表1.職業別,年齢別HSV検出率(K産婦人科医院)(1986〜1993年)
表2.職業別,型別HSV検出率(K産婦人科医院)
表3.性別,型別HSV検出率(サーベイランス事業)(1987〜1993年)





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