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Vol.14 (1993/12[166])

<国内情報>
大阪市におけるSalmonella Enteritidisのファージ型の動向(1990〜1993)


 1990〜92年の3年間に大阪市で発生したサルモネラ食中毒,有症苦情19件のうち,Salmonella Enteritidis(.E)によるものは5件であり,比較的少なかった。それに反し,93年ではサルモネラ食中毒8件中5件とその大半を占めるに至った。また,国立予防衛生研究所に依頼して行った.Eのファージ型別もそれを反映した様相を示した(表参照)。

 92年までの5事例のファージ型はすべて34型であった。 本月報(Vol.14,No.1,1993)の全国情報によれば90年以降ファージ型の主流は34型から4型に移行しているが,当研究所分離株では34型が主であり,4型の.Eが分離されたのは92年の京都府関連.E食中毒2事例のみであった。しかるに,93年では.E食中毒の増加と共に,そのファージ型も事例ごとに異なるという様相を示した。93年の5事例は,

 1)近くの飲食店に特注した花見弁当が原因と思われる48名中30名発症した事例。患者11名,調理従事者6名から分離された.Eのファージ型は4型(患2,調2),11a型(患7,調1)および型別不能(患2,調3)であり,3種類の異なったファージ型の.E混合感染と推定された。

 2)居酒屋でユッケ,マグロヤマカケ等喫食した4名中4名発症事例は全国流行型の4型の.Eが患者3名から検出された。

 3)恐らく家庭での食事が原因であろう6名中5名発症事例では,92年に全国で急増した1型の.Eが患者1名とその家庭にあったスポンジから検出された。

 4)事務所昼食のオムライスが原因と思われる70名中28名発症した事例では,本市主流の34型の.Eが患者8名から検出された。

 5)法事の会席料理が原因と思われる13名中8名発症した事例では,全国でも珍しい9a型の.Eが患者5名から検出された。

 上記5事例とも残品,検食はなく,原因食品を特定することはできなかったので,これらS.Eの由来は不明である。この93年の状況が一時的なものかどうか今後の.Eの動向を見守りたい。



大阪市立環境科学研究所 花岡 正季


表.Salmonella Enteritidisのファージ型別(1990-1993:大阪市)





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