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Vol.14 (1993/11[165])

<外国情報>
台湾南投県における肝吸虫症の疫学検査と治療


 台湾における寄生虫病の多くはコントロールが成功しているが,肝吸虫はいまだに感染者がみられるので,南投県の13部落の1,758名を対象に,AMSAV遠心沈殿集卵法による検査が行われた。その結果は表1のように平均16.9%に虫卵保有者がみられたが,低年齢層には低く,年齢の増加に伴って保卵率が高くなる傾向がみられた。

 アンケートをもとに解析すると,41%の人は小学校卒業の学歴で,23%は教育を受けていなかった。職業は38%が農業従事者で,後は学生(14%)と無職(36%)が占めていた。また,感染が生魚を食べて起こることを知らない人は11%であったが,53%は生魚を食べていた。ただし,その多くは1年に数回食べると答えている。

 241名の患者の自覚症状は吐き気が31%で,腹部圧迫感27%,消化不良21%,胃痛20%,頭痛18%であった。

 これらの感染者は3グループに分けられ,PraziquantelをA群:40mg/kg1回,B群:20mg/kg2回,C群:25mg/kg3回投与を行い,投薬3カ月,6カ月,12カ月後の陰転率を求め,Praziquantelの駆虫効果を比較検討した。駆虫の結果は表2のように40mg/kg1回および20mg/kg2回投与群では1年後の陰転率はそれぞれ76.9%および77.9%であったが,25mg/kg3回投与群では陰転率90%を示した。投薬により吐き気や腹部圧痛のような神経症状あるいは消化管に対する副作用が21例に見出された。

(台湾疫情報導,9,No.5,55,1993)

編集子:肝吸虫感染者は日本にもまだ存在しており,その駆虫剤として近年,本報告で使用されたPraziquantelが希用薬として認可され,駆虫困難であった肝吸虫症も治療可能になった。



表1.南投県住民における年齢別肝吸虫感染状況
表2.Praziquantel 投薬法別陰転率(%)の変動





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