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Vol.14 (1993/6[160])

<国内情報>
高齢者福祉施設の集団下痢症患者からのロタウイルスの検出−埼玉県


 ロタウイルスは小児下痢症の主要な原因ウイルスの一つであり,しばしば,保育園,幼稚園等での集団発生がみられる。今回,埼玉県K町にある軽費老人ホームM施設において発生した集団下痢症の患者からロタウイルスが検出されたので,その概要を報告する。

 この施設は11階建てで,1階は管理部門,食堂,浴場,集会室等があり,入居者は2階から11階までの個室(便所,簡単な流し付き)に入居しており,食事は3食とも施設内で調理提供されている。各階とも12居室で,入居者は123名(単身117,夫婦3組)である。

 下痢症患者は入居者のみで施設職員には発生はなく,4月2日に6名,3日16名,4日8名,5日7名,6日3名,7日1名の計41名が発症した(発症率33.3%)。

 この集団下痢症は,当初,食中毒が疑われたので,職員14名(調理8名,介護等6名),入居者9名(患者8名,健康者1名),計23名の糞便検体について食中毒関連菌の検出が試みられたが,陰性であった。

 同一検体について,ロタクロン(Cambridge Biotech Co.)を用いてウイルス抗原の検出を行い,患者8名中4名が陽性(陽性率50%)であったが,他の検体はいずれも陰性であった。同時に,検体量の十分あるものについて,電顕によるウイルス検索を行った結果,ロタクロン陽性の検体のみがロタウイルス陽性であった。また,SRSV等の下痢症関連ウイルスは検出されなかった。なお,検出されたウイルスの抗原分析などについては現在進行中である。

 暴露時点は,Sartwell法により3月31日の午後と推定された。



埼玉県衛生研究所 篠原 美千代,大塚 孝康,後藤 敦





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