HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.14 (1993/6[160])

<国内情報>
千葉県で発生したC群ロタウイルスによる集団下痢症


 1993年4月中旬,千葉県柏市内の1小学校において下痢,嘔吐,腹痛を主症状とする集団下痢症がみられ,C群ロタウイルス検出用R−PHA法で高率にC群ロタウイルス感染を確認できたので,その概要を報告する。

 患者発生状況を図に示した。患者発生は4月14日に始まり,15日,16日に有症者の7割が集中し,19日まで発生がみられた。給食は自校の調理室で作られ,4月12日から始まっていた。患者は1年生を除く(給食が始まっていない)2年生から6年生までみられ,発病率は25.2%(743名中187名)であった。なお,3年生の患者発生は他学年より2日程遅れていた。主な症状は,腹痛(60.3%),吐気(55.9%),下痢(47.1%),嘔吐(36.0%),発熱(37.5%),発熱は37〜38℃であった。

 食中毒を疑った患者便,食品,水の細菌学的検査の結果,病原細菌はいずれも陰性であった。患者37名の便(30名は細菌検査用に採取されたキャリーブレア培地の便)についてウイルス学的検査を行った。電子顕微鏡観察では,37名中31名にロタウイルス粒子を確認した。ELISA法によるA群ロタウイルスの検出は,1名を除き全例陰性で,電顕で確認したロタウイルスは,非定型ロタウイルスと考えられた。そこで,岡山県環境保健センターで作製されたC群ロタウイルス検出用R−PHA法キットを用いたところ,A群ロタウイルス陰性で電顕でロタウイルスを確認した30名中28名が陽性であった。本法は,電顕検索に比べ簡便で感度も高く,有用な方法と思われた。また,一部の検体についてSDS−PAGEによるRNA分析を行ったところ,C群ロタウイルス特有の泳動パターンがみられた。

 以上の結果から,今回の集団発生はC群ロタウイルスによる下痢症であることが確認された。

 本事例の患者発生は,5月15日,16日の2日間に集中していたが,保健所における調査においては,感染源および感染経路は明らかにできなかった。また,3年生の患者発生が他学年より遅れてみられ,二次感染の可能性も考えられた。

 最後に,C群ロタウイルス検出用R−PHA法キットを分与いただいた岡山県環境保健センターの藤井理津志先生に深謝します。



千葉県衛生研究所 篠崎 邦子,海保 郁男,時枝 正吉
柏保健所 實川 浩


図.患者発生状況





前へ 次へ
copyright
IASR