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Vol.14 (1993/6[160])

<特集>
ヘルパンギーナ 1992


 ヘルパンギーナは,主にコクサッキーウイルスA群(CA)による急性熱性疾患で,咽頭から軟口蓋にかけての水疱を特徴とし,毎年夏に乳幼児に多くみられる。

 1992年のヘルパンギーナの流行は,主としてCA4とCA10による小規模のものであった。

 感染症サーベイランス情報によると,1992年の流行は1982年の事業開始以来最小の規模であった(図1)。患者報告数は例年通り6月第1週から増加し始め,7月第4週をピークとして9月末に終息した。一定点当たりの年間患者報告数は1989年と並んでこれまでの最低値を示し,全国平均は33.30人であった。ブロック別で多かったのは九州沖縄の46.77人,中国四国の43.51人で,少なかったのは関東甲信越の24.59人,近畿の26.69人であった。前年比は,全国では0.75で,1を超えたのは,九州沖縄ブロックの1.16のみであった。

 1992年にヘルパンギーナの症状が報告されたウイルス検出例は433であった。ウイルスの種類別にみるとCAが75.1%を占め,CA4とCA10で過半数を占めた(図2)。

 ヘルパンギーナの特徴の一つは,病因となるCA群のCA2,CA3,CA4,CA5,CA6,CA10の血清型がそれぞれ異なる間隔で流行しており,毎年主要な型の組み合わせが替わることである(表1)。CA4は1991年に引き続く流行,CA10は1990年以来の増加である。CA以外のウイルス流行に大きく関与していない。

 1992年にCA4が検出された全症例をみると,215例中152例がヘルパンギーナ,6例が感染性胃腸炎,6例が手足口病,3例が無菌性髄膜炎,2例が突発性発疹と診断された症例から検出されている。CA10では225例中109例がヘルパンギーナ,32例が手足口病,2例が感染性胃腸炎からであった。1982〜1992年の各年について総検出数に占めるヘルパンギーナの症例の比率をみると,CA各型いずれも60〜70%である。

 ヘルパンギーナの症状が報告された例のウイルス検出状況を月別にみると,CA4が4月から報告され始め,7月にピークを示して9月に終息した。一方,CA10はほぼ1カ月遅れて増加が始まり,8月にピークを示して11月に終息した。CA6は7月に小さなピークを示した(図3)。

 地域別にみると,CA4は秋田から鹿児島にかけての20都道府県で,CA10は神奈川から大分にかけての14府県で検出された。CA4が多かったのは神奈川の51例,長野の37例,奈良の25例で,CA10が多かったのは島根の36例,愛知の15例,神奈川の14例,大分の13例であった。CA6は28例中17例が島根で,CA2は6例全例奈良で検出されている。

 ヘルパンギーナの症状が報告された例の年齢分布は例年通りで,1歳をピークに0−4歳が85.1%を占めた。年齢別にウイルス検出状況をみると,1−4歳ではCAがほぼ70−80%を占めるが,0歳および5歳以上ではCA以外のウイルスの比率が高まる(図4)。0歳ではCB,その他のエンテロ,アデノウイルスがいずれも9.1%を占め,5歳以上ではCBが14.1%,HSVが9.4%を占めた。

 検体の種類別にみると,CA4は146例が鼻咽喉,6例が便から検出され,CA10は93例が鼻咽喉,13例が便,3例が便と鼻咽喉の両方から検出されている(表2)。

 CAの検出方法は,CA9とCA16を除いて,乳のみマウスによる分離が主で,それぞれの型で60%以上を占めた。しかし,CA4の総検出例215例中35例,CA10の225例中82例は培養細胞単独で,また,それぞれ2列および3列は乳のみマウスと培養細胞の両方で分離された。

 [速報:感染症サーベイランス情報によると,1993年第20週(5月16日〜5月22日)における1定点当たり患者発生数の全国平均は0.20人である。香川県が2.58人と高い。5月21日現在,ウイルス報告数にまだ目立った動きはない。]



図1.ヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.ヘルパンギーナの症状が報告された例のウイルス検出状況 1992年
表1.ヘルパンギーナの症状が報告された例の年別ウイルス検出状況 1982-1992年
図3.ヘルパンギーナの症状が報告された例の月別ウイルス検出状況 1992年
図4.ヘルパンギーナの症状が報告された例の年齢別ウイルス検出状況 1992年
表2.ヘルパンギーナの症状が報告された例の検体別ウイルス検出状況 1992年





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