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Vol.14 (1993/1[155])

<国内情報>
新潟県におけるSalmonella Enteritidisによる大型集団食中毒事例について


 新潟県内のサルモネラによる食中毒の発生は平成3年度までは比較的少なかったが4年度に入って多発し,11月末現在で5事例(4件:S.Enteritidis(.E),1件:S.Thompson),患者数992人に達し,全体の食中毒事件数17件,患者数1,519人の中で最も多い病原菌となっている。

 サルモネラによる食中毒事例のうち10月6日,新潟県北蒲原群豊浦町月岡温泉のホテルS(収容人員640人)で発生した事例は摂食者数1,502人,患者数469人の大型の食中毒事件となった。その発生概要は次のとおりであった。

 10月6日にホテルSに宿泊した長野県小県郡の団体旅行の一行455人中111人が10月7日,20時30分頃から,腹痛,下痢(10数回),発熱(38.5℃)等の食中毒症状を呈し,うち57人が医師の手当を受け,3人が入院した旨,患者を治療した医師から10日,長野県上田保健所に届け出があり,同ホテルの所在地区を所管する新潟県新発田保健所によって調査が行われた。その結果,4日〜9日に宿泊した客23都道府県137グループ1,960人のうち64グループ469人(男性270人,女性199人)が発症していることが判明した。利用日別の患者発生状況は4日97人,5日86人,6日233人,7日42人,8日8人,9日3人で,患者の年齢は60〜69歳が最も多く137人,ついで40〜49歳が93人,50〜59歳が80人,70歳以上が65人と高齢者が多く,40歳以上の患者が80%を占めていた。この中で医師の治療を受けた患者は152人,入院した患者は10人であった。主な症状は下痢84.9%,腹痛62.3%,発熱42.6%,頭痛36.6%,悪寒27.2%,嘔吐10.2%,嘔気6.4%,倦怠感5.3%および脱力感2.8%等であった。検便は新潟県,長野県,東京都,千葉県,茨城県,神奈川県,埼玉県,兵庫県および富山県で合計123人の患者について実施され,69人からサルモネラ菌が分離されている。新潟県内の患者から分離された7株のサルモネラ菌はすべて.Eであった。東京都と新潟県の患者および調理従事者から分離された.Eのファージ型別を国立予防衛生研究所に依頼した結果,4型であることが判った。

患者の最も多く発生した6日の宿泊者の食事(夕食:刺身,ローストビーフ,揚物,茶碗蒸し,鮎のうま煮,なめこ・もずく,イカの塩辛等,朝食:コンニャクサラダ,豆コンブ,ハム・ウインナー等)12件と7,8日宿泊者の献立の中で残っていた27件の調理品を培養検査したが,.Eは分離されなかった。献立の中に卵加工品の茶碗蒸しは含まれていたが,検食の中に残っていなかったので未検査となった。まな板,包丁,冷蔵庫および調理従患者の手指について拭きとり検査を実施したが,いずれからも.Eは検出されなかった。調理従患者11人中7人の便から.Eが分離された。これらの従業員はいずれもホテルの献立の食事を摂食していないこと,さらに単なる健康保菌者ではなく,以前に下痢症状のあった者もいたことが確認されていることから原因食品は特定できないが,調理従事者によりいずれかの食品が汚染された可能性も考えられる。一方で原因食品として,最も可能性の高いと考えられる卵加工品を検査できなかったことから,.E汚染卵が関与していた可能性も否定できないと考えられた。



新潟県衛生公害研究所





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