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Vol.13 (1992/5[147])

<特集>
細菌性髄膜炎 1990〜1991


 感染症サーベイランス情報における感染性髄膜炎の発生報告のうち,細菌性髄膜炎の占める割合は数%に過ぎない。1990年は感染性髄膜炎報告総数3,724のうち246(7%)が,1991年は7,881のうち286(4%)が細菌性髄膜炎であった。1987年以降1989年までの細菌性髄膜炎の報告数329,342および308に比べて最近2年はやや減少した。一定点医療機関当たりの年間報告数は0.47および0.52であった。

 図1に1987年〜1991年の月別患者発生数を病院定点当たり報告数で示した。7〜8月に発生がやや多く見られる年があるものの,月別発生の差は明瞭でない。

 患者の年齢分布は0歳が最も多く1990年は43%,1991年は35%であった。1〜4歳の合計はそれぞれ30%および28%,5〜9歳は9%および18%であった(図2)。患者の約80%が9歳以下の小児である。患者の男女比は1990年,91年ともに1.6:1であった。

 感染症サーベイランス情報でこれまでに髄膜炎患者の病因として報告された病原体の主なものは,インフルエンザ菌,肺炎球菌,B群レンサ球菌等である。細菌性髄膜炎患者の約20%についてこれら病原体が報告された。

 病原微生物検出情報では1990年1月から医療機関で検出される病原細菌について検体材料別に病因と考えられる菌に限定して収集する方式に改めた。髄液からの分離では7種類の細菌の分離数が収集されている。本集計によると,髄液から検出された病原細菌の総数は1990年238,1991年306であった。このうち検出率の最も高かったのは黄色ブドウ球菌(S. aureus)で,1990年47%,1991年50%,ついで肺炎球菌(S. pneumoniae)がそれぞれ19%,20%,インフルエンザ菌(H. influenzae)が19%,16%であった。さらにB群レンサ球菌(Streptococuus,B),大腸菌(E. coli),リステリア菌(L. monocytogenes)等が8〜1%に検出された。髄膜炎菌(N. meningitidis)は両年とも各1が検出された(図3)。

 感染症サーベイランス情報で最も多く報告され,病原微生物検出情報でも髄液からの検出数が多いインフルエンザ菌は,咽頭および鼻咽喉材料からは約40%,喀痰および下気道材料からは約9%に検出された(図4および5)。また,血液からの検出は1%であった。ちなみに,1990〜1991年に血液から最も多く検出されたのはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)(45%),ついで黄色ブドウ球菌(23%)であった。最近,血液からのCNS検出の増加傾向が指摘されるようになったが,本菌は皮膚常在菌であるため採材の際の汚染も考えられる。採材には一層の注意が望まれる。

 病原微生物検出情報では重要と考えられた症例に関する個別情報を収集している。表1は,1990〜1991年に報告された個別情報から,細菌性髄膜炎患者のうち髄液から病原体が検出された事例を,検出病原菌種別に記載したものである。B群レンサ球菌は2ヵ月までの乳児から,インフルエンザ菌は4歳以下の小児からのみ検出された。成人あるいは中高齢者の髄膜炎患者から検出された菌種は多岐にわたった。



図1.月別細菌性髄膜炎患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.年齢別細菌性髄膜炎患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図3.医療機関における病原細菌検出状況 分離材料:髄液
図4.医療機関における病原細菌検出状況 分離材料:咽頭および鼻咽喉からの材料
図5.医療機関における病原細菌検出状況 分離材料:喀痰,気管吸引液および下気道からの材料
表1.細菌性髄膜炎患者に関する個別情報 1990年〜1991年





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