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Vol.13 (1992/1[143])

<国内情報>
エコーウイルス30型による無菌性髄膜炎の流行−福井県


 本県における無菌性髄膜炎(AM)患者の発生は11月に入っても衰えることなく続いている。

 1991年1月から11月中旬までに採取した患者髄液141検体(141名)について,HEp2およびRD-18S細胞によるウイルス分離を行った結果,84検体(60%)からエコー30型を分離した。それ以外では8月にエコー9型が1例分離されたにすぎず,今季のAMがエコー30型によったことがうかがえる。分離依頼患者は0〜7歳の年齢層で全体の80%(91/113名)を占めた。エコー30型の細胞変性効果はHEp2細胞の方がRD-18S細胞に比べて,1日程度早く出現した。同定はエンテロプール血清(予研分与)および単一抗血清を用いて行った。特にエコー30型は自家製(1983年福井分離株)抗血清を利用したため,同定に問題はなかった。

 AM患者からのエコー30型ウイルスの分離状況を表に示した。1990年7月,Cox. B群に混在して1例確認されたのが最初である。以後,1991年11月まで断続的に分離されている。この間,県の北西部に位置する三国町ではエンテロウイルスの流行閑期と考えられる10月(1990年)〜翌年3月(1991年)にかけて,このウイルスによる髄膜炎の集中的な発生がみられた。また,1991年7月,8月は永平寺町,9月以降はもっぱら福井市北東部を中心に分離依頼数の増加が見られた。

 このように本県の流行の特徴は限局的な集中発生を繰り返しながら侵淫規模を拡大していく様相を呈していた。このウイルスが2年続けて本県内に越冬するのかどうか注目している。



福井県衛生研究所 松本 和男,村岡 道夫,飯田 英侃,小林 桂子


無菌性髄膜炎患者髄液からのウイルス分離結果(福井県)





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