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Vol.12 (1991/8[138])

<国内情報>
エコーウイルス30型による無菌性髄膜炎の流行−大阪府


1991年大阪府では例年のように4月下旬頃から無菌性髄膜炎の発生が認められていたが,6月中旬から数年来見られなかったほど急激に患者数が増加し始め,7月下旬の現在も患者数は減少していない。これまでは主に大阪府の中部から北部(大阪市,豊中市,高槻市,寝屋川市等)における地域・学校での流行であり,局地的かつ集中的な点が特徴であった。この流行は次第に大阪府南部にも広がりつつある。流行地区の小学校では学級閉鎖が行われた所もあり,インフルエンザの流行時なみの対策に追われた模様である。

7月18日現在,当所にウイルス分離依頼のあった無菌性髄膜炎患者は176名であり,主に4歳から6歳の児童に集中している。0歳児も含まれているが,特に多いということはない。また,男女比は3:2であり,例年ほど男子優位ではないというのが特徴であった。ウイルス分離は髄液137例,その他9例からLLC−MK2,HeLa,RD−18S細胞を用いて行ない,これまでにEcho30(E30)が28株,Cox.B2が1株,未同定(検査中)10株のウイルスが分離されている。

E30はRD−18Sで早期にCPEが出現し,初代でも同定可能なほど高い感染価が得られた。近府県の一部では高い感染価が得られないE30も分離されているという情報もある。分離ウイルスはレファレンスシステムのエコープール血清でよく中和され,型同定は容易であった。しかし,市販のE30抗血清は力価が低く同定ができない場合があるとのことであるので注意が必要である。

以上のことから,1991年現在までの大阪府内での無菌性髄膜炎の流行は大多数がE30によるものであり,感染症サーベイランス事業開始以来,最大規模の流行になるものと思われる。



大阪府立公衆衛生研究所
山崎謙治 大石 功 峯川好一





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