HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.12 (1991/8[138])

<国内情報>
秋田県内で流行中の無菌性髄膜炎について


1991年6月下旬から県中央部の秋田市,本荘市,県南部の角館町,田沢湖町,横手市などで,無菌性髄膜炎(AM)の流行が認められた。田沢湖町で採取した5名(表1)からウイルスが分離された。このうち症例1と2はエコーウイルス30型(E30)と同定された。症例3,4,5のウイルスは同定中である。

E30によるAMの流行は1983年以来8年ぶりである1)。ウイルス分離はRD−18S,Vero,HEAJ(当所樹立ヒト由来細胞)細胞を用いて行なった。RD−18S細胞での感受性が高く,検体接種後2〜3日でCPEが出現した。症例1の分離株は哺乳マウスに病原性を示さなかった。また,上記分離株の抗原性は,標準株より1983年の分離株に類似していた。

1990年9〜10月に採取した県内在住者(横手市)の血清(0〜1,2〜3,4〜6,7〜9,10〜15歳群を各々25,25,27,26,25検体,合計128検体)を用いてE30に対する中和抗体保有状況を調査した(図1)。その結果,2〜3歳群に24%の保有率が認められ,1990年9〜10月以前に小さな侵襲があったと推定された。7〜9歳以下の平均抗体保有率は15%と低いことから,10歳以下の年齢群を中心に流行することが2)懸念されている。参考までに1980年,1985年,1988年における県内住民(本荘市)のE30に対する年齢別中和抗体保有状況を図2に示した。

参考文献

1)原田誠三郎他:エコーウイルス30型による無菌性髄膜炎の流行,秋田県衛生科学研究所報28:83〜88,1984。

2)森田盛大,佐藤宏康,安部真理子:発疹症と無菌性髄膜炎の病原ウイルスの動向,臨床と微生物Vol.16,No.2,59〜67,1989。



秋田県衛生科学研究所 安部真理子 佐藤宏康 斉藤博之 森田盛大


表1.無菌性髄膜炎患者からのウイルス分離成績(秋田県)
図1.E30に対する中和抗体保有状況(1990年・横手市)
図2.E30に対する中和抗体保有状況(1980年,1985年,1988年・本荘市)
エコーウイルス30型に対する中和抗体保有状況図1の追加情報(1990年秋田県横手市)



前へ 次へ
copyright
IASR