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Vol.12 (1991/7[137])

<国内情報>
インフルエンザ反復感染について


1980年から90年まで,社会保険蒲田総合病院小児科の来院患者からインフルエンザウイルス分離を試み,個人のインフルエンザ感染状況を追跡した。この間に分離されたウイルスは1,234株で,これを個人の側からみると,感染者964名で,そのうち2回以上反復感染者は204名(21%)であった。反復感染の内訳は,2回153例,3回40例,4回8例,5回2例,6回1例で,型の組み合わせは表のようであった。

ウイルスが分離された日を感染した日と仮定すると,a)A亜型とB型との反復感染は混合流行中には最短14〜16日の間隔でみられた。b)A亜型同士の一流行中の反復感染は,3型混合流行の時にもみられなかった。ただし,特殊な例としてH1とH3の同時感染例が確かめられた。A亜型同士の反復感染は,主流行でH3に感染し,その6月後に次の流行の前駆波となったH1に感染した例が最短であった。c)同じ型の反復感染は,一流行中に2回感染した例はみられず,いずれの型についても1年10月が最短であった(この集計の後で1990年と91年の主流行にかけて,H3に2回感染した2例がみられ,その間隔は11月,12月なので,H3の反復感染はより短い例がみられたことになる)。d)前駆波と主流行の間の反復感染は,同じ型同士ではみられなかった。H3とBの混合流行の時,相互に前駆波と主流行に異なった型に反復感染した例がみられた。

反復感染例で特にめだったものとしては,10月間に3型,3年11月間にH1に2回・H3に1回・Bに2回,9年間に3型にそれぞれ2回ずつ感染した例があった。

インフルエンザウイルスは毎年のように流行し,個人的にも一生のうちに幾度も感染することが通常と考えられているが,本成績はそのことをウイルス学的に証明しており,実際には来院しない軽症者,ウイルス分離陰性血清学的陽性者もおり,さらに成人の反復感染者も加わって流行が形成されているものと思われる。



埼玉医科大学細菌学教室   西川文雄
社会保険蒲田総合病院小児科 秋田美千代


表.反復感染の状況





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