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Vol.12 (1991/6[136])

<特集>
ヘルパンギーナ 1990


感染症サーベイランス情報によるヘルパンギーナ患者発生報告数は1988,1989年は少なかったが,1990年は例年なみに戻った。流行は5月末から立ち上がり,全国集計では第29週(7月第3週)をピークとして9月末には終息した(図1)。1990年は一定点当たり患者報告数がすべてのブロックで増加し,特に中国四国ブロックの増加が目立った(図2)。都道府県別では福島,岡山,山梨,山口が対前年比3以上と大きく増加し,これら4県が突発性発疹患者数を分母にヘルパンギーナ患者数を分子とする比においても1990年の上位を占めた。

ヘルパンギーナ患者の年齢は例年通り4歳以下が大部分を占めた(81.9%)が,5〜9歳の割合をみるとやや多く15.5%であった(1988年11.4%,1989年13.3%)(表1)。

1990年に臨床診断名および臨床症状に「ヘルパンギーナ」が報告されたウイルス検出例は567で,例年通りコクサッキーウイルス(C)A群が上位を占めた(図3)。CA10は1984年,88年,90年に増加している。CA2は1983年,85年,88年に次いで2〜3年周期での増加である。CA5は1984年,86〜7年に次いで増加した。CA4は毎年相当数が検出される型で,1985年,87年,89年の増加年に比べて1990年は少ない年であった (本月報Vol.11 No.6参照)。 CA10,2,5,4,6型の総検出報告のうち,ヘルパンギーナ患者からの検出が占める割合はそれぞれ51〜81%であった。この他に1990年に流行したCB3分離例240中27(11%),CB2分離例199中16(8%)にヘルパンギーナが報告された。CA5,4は6月,他の型は7月をピークとして検出された(表2)。

地域別分布をみると,CA10は20府県市,CA2は11府県市,CA5は14府県市,CA4は10県市で検出された。大分ではCA4,香川ではCA5が主に検出され,長野,島根,神奈川等はそれぞれ異なった型の組み合わせが報告された(表3)。

ウイルスが検出されたヘルパンギーナ患者の年齢分布をみるとCA10,2,5,4,6は1歳をピークとして4歳以下がそれぞれ80〜87%を占め,感染症サーベイランス情報の患者の年齢分布とよく一致した。CB3では0〜4歳56%,5〜9歳37%と,年長児の割合が高かった。

ウイルスが検出されたヘルパンギーナ患者のヘルパンギーナ以外の症状として発疹が26(うちCA10が17),手足口病様6(うちCA10が2),髄膜炎3(CA4:1,エコー30:1,アデノ3:1)が報告された。

ウイルスが検出されたヘルパンギーナ患者567例について検体の種類をみると,CA10

は鼻咽喉148,便3,鼻咽喉と便の両方から5で,CA2はそれぞれ98,1,1,CA4は鼻咽喉55,髄液1で,その他のコクサッキーAおよびB群はすべて鼻咽喉から検出された。

ウイルス検出方法をみると,CAウイルスは乳のみマウスによる分離が364,培養細胞による分離が39,この両者で分離陽性が16あった。CA10はそれぞれ119,25,12,CA2は98,1,0,CA5は66,1,1,CA4は49,5,2であった。

1991年5月末の時点で,本年1月以降のヘルパンギーナ患者からのウイルス検出として,CA2が2月2例,CA4が3月1例,CB3が4月1例,HSV1型が1月1例,2月3例,インフルエンザA(H)が2月1例報告されている。



図1.ヘルパンギーナ患者発生状況 1982〜1990年(感染症サーベイランス情報)
図2.ブロック別年別ヘルパンギーナ患者発生状況 1982〜1990年(感染症サーベイランス情報)
表1.年齢群別ヘルパンギーナ患者発生状況,1990年*(感染症サーベイランス情報)
表2.ヘルパンギーナ患者からの月別ウイルス検出状況 1990年
表3.ヘルパンギーナ患者の住所地別ウイルス検出状況 1990年
図3.ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況,1990年





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