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Vol.12 (1991/2[132])

<国内情報>
1990年の北九州市における無菌性髄膜炎の原因ウイルスについて


感染症サーベイランス事業報告によると,福岡県では1990年,無菌性髄膜炎(AM)の患者数が前3年間より増加し,比較的大きな規模で流行した(図1)。当所においても2月から11月にかけて,患者を対象にウイルス検査を実施したので,その結果について紹介する。

検体は患者35名(年齢0〜11歳)から採取した髄液35,咽頭拭い液18,便17の計70件である。分離用細胞としてBGM,HeLa,RD−18S,Veroを使用し,2〜3代目まで継代した。分離陽性であったのは髄液21,咽頭拭い液15,便11の計47件(48株),患者にして29名である。表1に型別ウイルス検出状況を,また,陽性の29名について,ウイルス分離成績から推定した病原を月別に表2に示した。

主な分離株はECHO(E)30,Cox.B6,E9の3種類であった。CB6はCox.B群の中でも分離報告の非常に少ない型で,この10年来流行がはっきりと確認されていないウイルスである。また,E30は1989年に髄膜炎の病原として注目されたが,その年福岡県では検出されなかった。これら3種のウイルスは,6月から11月にかけて,他の疾患からも多数検出され,当市では特に不明発疹症の患者20名中13名からE9,3名からCB6が検出されたことが注目される。

なお,CB6はBGM,HeLaで,E30とE9はBGM,RD−18Sで大半が分離された。細胞の感受性は,E30ではRD−18Sの方がよかったが,CB6とE9では両細胞間でほとんど差がなかった。また,同定はE30とCB6では容易であったが,E9分離株の中にはbreak through現象がみられるものもあった。未同定株はVeroでのみ分離され,哺乳マウス感受性であるが,予研のエンテロウイルスプール血清,Cox.A群マウス免疫腹水,アデノウイルス抗血清で中和されなかった。



北九州市環境衛生研究所 下原悦子 仮屋園弘志 杉嶋伸禄


図1.月別週平均患者報告数(1989.10〜1990.11)
表1.型別ウイルス検出状況
表2.月別ウイルス検出状況





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