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Vol.12 (1991/2[132])

<国内情報>
鳥取県における1990年の無菌性髄膜炎


1990年の鳥取県の無菌性髄膜炎(AM)の発生状況は中規模であった。

1年間にAMを疑う例を含む187名から分離材料が得られ,127名(67.9%)からエコー(E)9,19,30型,コクサッキー(C)A9,B3型,アデノ(Ad)3,6型,エンテロ71型(EV71),ムンプス,ロタの各ウイルスが分離された。未同定のウイルスを含め11種類のウイルスが分離されたが,最近では流行の大小にかかわらず9〜12種類のウイルスが関与している。

月別ウイルス分離状況を表に示した。例年10月には検査数が急激に減少するが,暖冬の影響からか,1990年は12月までなだらかに減少している。また,大きな流行をみる年は6月,7月にピークを示す場合が多いが,1990年は流行形態を示し始めたのが7月中旬以降であり,流行開始時期が遅かったことが大流行に至らなかった原因とみなされる。分離された11種類のウイルスのうち鳥取県の東,中,西部の全地区から分離されたウイルスはE9,Ad3の2種類であった。

分離ウイルスごとにみると,E9は127名のうち67名から分離され,主流行ウイルスとなった。7月下旬に中部地区で分離され,8月上旬には西部,9月中旬に東部へと隣接する地区へ広がっていった。各地区とも分離数の多少にかかわらず4ヶ月間E9が分離された。

Ad3は7名から分離されたが,Ad3の流行年にはAMから分離されてくる。高熱が4〜7日間続き,EやCBによるAMと比較すると重症感があり,入院期間も長いが,髄液の細胞数増多はみられない場合が多い。

E30は前年の流行開始時期が遅く分離数も少なかった西部地区で,7,8月に9名から分離された。同地区では前年の12月からAMおよび他の疾患からのE30の分離はなく,また,異なるシーズンに2年続いて同じウイルスが原因となった年がないことからみると他県からの移入と考えられる。前年に比較しウイルスの同定が困難であった。

EV71は発疹のみられない2名から分離されたが,手足口病を伴う2名からは分離されなかった。

CA9は中部,東部地区の6名から分離された。前回流行時には発疹症からの分離であったが,今回は発疹症からの分離はなく流行もみられなかった。

ムンプスウイルスは唾液腺腫脹のみられない2名から分離されたものである。

E19は12月に新生児の咽頭,便から分離された。晩秋〜冬にかけて分離されるウイルスは翌年の流行ウイルスとなる場合が多く,注目される。

未同定ウイルスはプール血清あるいは1990年に分離されたウイルスの単味血清を用いた1回の検査により同定できなかったウイルスが残っているものである。



鳥取県衛生研究所 石田 茂 川本 歩 田中真弓 本田達之助


月別ウイルス分離状況(人数)





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