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Vol.12 (1991/1[131])

<国内情報>
感染症サーベイランス解析評価について(平成2年第3四半期)


平成2年11月6日



(前号からのつづき)

2.眼感染症

(1)咽頭結膜熱:第2四半期において小児科・内科定点からの報告が和歌山県で多かったが,第3四半期の和歌山県の小児科・内科定点では第33週と第34週が平均よりわずかに多かったが,眼科定点では第31週から第35週まで2〜3の報告があり,全国平均の0.2より多くみられる。新潟(第35週),大分(第37週),広島(第31週),岩手(第32,34,37週),長野(第32,35,36週)山口(第32週),京都府(第38週),京都市(第38,39週)に散発している。

(2)流行性角結膜炎:第30週から第39週まで1眼科定点当たり2〜3の報告があり,例年のごとく多発している。特に九州沖縄に多発傾向がみられる。図1に示すごとく(略),福岡県,福岡市,鹿児島県は第3四半期を通して毎日1〜5例の頻度で患者発生が継続している。佐賀県(第35〜39週),長崎県(第37〜39週),大分県(第30〜39週),宮崎県(第31〜35週),熊本県(第34,37,38週)に多発がみられる。九州以外では図2のごとく(略),青森(第36週),群馬(第35〜38週),新潟(第34,35週),静岡(第35〜39週),愛媛(第30〜35週)に多発している。

(3)急性出血結膜炎:宮城県では弟34,35週の4.4がピークをなす形で第32週から39週にかけて多発し,宮崎は第37〜39週,特に第39週には8.75という高い値を示している。この他福島(第36週),北九州(第34週)に多発がみられている。

3.ウイルス肝炎

ウイルス肝炎は今年,過去の3年平均の1.3倍に増加した。この主因はA型肝炎の増加によるものであり,B型肝炎およびその他のウイルス肝炎はこの2年はそれ以前の2年に比してやや減少している。

(1)A型肝炎:A型肝炎は3月をピークとして,1987年の3.7倍,昨年の1.8倍の増加をみた。男女ともに増加しており,他の肝炎と異なり,A型肝炎のみはこの3年,女性のほうがわずかではあるが多くなっていた。年齢分布からみると5〜14歳と35〜44歳の間で特に多いのが注目される。男女とも同傾向であるが,特に5〜14歳の間では男児に多い。地域別にみると今年のA型肝炎の多発は関東,中部,北陸,中国と広い範囲にわたってみられた。しかし,9月に至って例年なみまで減少した。

(2)B型肝炎:B型肝炎はこの2年,1987年に比較して約70%に減少している。男女比は1.7〜1.8で,この4年間ほとんど変化していない。年齢分布は20〜49歳の間でやや多く,特に25歳〜29歳と40〜44歳の間で多くなっているが,この増加は男性がこの部分で多いことが関係している。地域的には関東地方での増加,東北地方の減少が注目される。

(3)その他の肝炎:過去3年間減少傾向にあったが,今年は昨年より増加していた。献血血液でのHCV抗体スクリーニングの導入により輸血後肝炎が減少しているにもかかわらず,予想に反した結果である。年齢分布は0〜4歳と60歳以上で例年のように多かったが,これら年齢層では減少していた。

4.性感染症

(1)継続低位変動:性感染症全体を通じて大きな変動はないが,個々の疾患については,多少の変動がみられる。淋病様疾患,陰部クラミジア症は前の四半期より増加の傾向がみられ,ともに7〜8月にピークがみられ,その後,減少傾向にある。陰部ヘルペス,尖圭コンジローム,トリコモナス症はほぼ同じである。

平成2年8月の定点当たりの報告数は,淋病様疾患2.26(男2.04,女0.23),陰部クラミジア症2.03(1.46,0.57),陰部ヘルペス0.85(0.52,0.33),尖圭コンジローム0.58(0.49,0.09),トリコモナス症0.70(0.07,0.64)であり,前2者で62.7%を占めている。

(2)昨年の同時期との比較:淋病様疾患,陰部クラミジア症は昨年より増加の傾向にあり,陰部ヘルペスもわずかながら増加している。一方,尖圭コンジロームはわずかながら減少し,トリコモナス症は明らかに減少している。

(3)年齢分布:淋病様疾患,陰部クラミジア症は男性は20〜29歳,女性は20〜24歳をピークとする分布を示している。陰部ヘルペスは男性は20〜40歳,女性は20〜30歳にやや幅の広いピークがみられる一方,60歳以上に再上昇するというパターンがみられる。尖圭コンジロームも男性はやや幅の広いピークがみられている。これに反しトリコモナス症は20〜50歳にわたってみられ,他の性感染症のようなピークがみられていない。

(4)対淋病様疾患比:陰部クラミジア症は,昭和62年1月の0.65から平成2年9月の0.97と,最近ではほぼ淋病様疾患と同数の報告数となっている。陰部ヘルペスは増加傾向にあり,尖圭コンジロームとトリコモナス症は減少。

(5)病原体情報:性器に主に感染するHSV−2は,1980年以降着実に分離数が増加している。陰部ヘルペスから分離されたHSVの型は表の通りである。

男はHSV−2が大部分であるが,女は約3分の1がHSV−1であった。



結核・感染症サーベイランス 情報解析小委員会








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