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Vol.11 (1990/8[126])

<国内情報>
宮崎県の紅斑熱リケッチア症患者発生地で捕獲したアカネズミからの紅斑熱群リケッチアの分離


 1985年以来,わが国にも紅斑熱群リケッチアによる患者の発生が四国,九州を中心に認められている。しかしながら,その媒介節足動物,感染巣動物は明らかではない。

 我々は1989年5月,それまで4名の患者の発生が報告されている宮崎県高岡町において,うち1名の患者が感染したと考えられる地点周辺の薮地で野鼠の採取を行った。獲られた14匹の材料はすべてアカネズミ(Apodemus speciosus)であった。

 これらアカネズミの血清について,Rickettsia japonica(YH),R.montanaを抗原とし,間接蛍光抗体法により抗体価の測定を行ったところ,14匹はいずれも両抗原に対し陽性であり,その抗体価はR.japonicaに対し80〜5,120倍(GM951),R.montanaに対し80〜2,560倍(GM430)であり,両者の間に有意差が認められた(Japan. J. Med. Sci. Biol., 42, 143-147, 1990)。これらアカネズミの脾臓乳剤をVero−E6細胞に接種したところ,初代からCEPが認められ,リケッチアが1株(TO−1)分離された。

 このリケッチアに対し捕獲した14匹のアカネズミ血清の抗体価は80〜5,120倍(GM1,159)を示し,R.montanaとの間には有意差が認められた。また,宮崎県で発生した患者血清5例についても本分離株に対する抗体価はR.montanaに対するそれよりも1〜2管高い傾向が認められたが,YH株に対する抗体価との間には差は認められなかった。

 YH株,TO−1株を接種したラットの血清も同様にR.montanaに対しては1〜2管低く反応したが両株の間には差が認められなかった。

 以上の結果より,本分離株はR.japonicaにきわめて類似した抗原性を有するものと考えられた。また,患者発生地のアカネズミが高率に抗体を保有することから,アカネズミが本症の感染巣動物の一つである可能性が示唆された。



宮崎県衛生環境研究所 山本 正悟,大浦 恭子,川畑 紀彦
国立予防衛生研究所 森田 千春
宮崎医科大学 土屋 公幸





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