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Vol.11 (1990/3[121])

<特集>
アデノウイルス感染症 1988〜1989


 1988年8月までのアデノウイルス検出状況については 本月報104号 に記載された。今回はその後の報告を加えた1988年,および1989年の検出状況の報告である。

 厚生省感染症サーベイランス事業における咽頭結膜熱および流行性角結膜炎の患者発生状況は,1988年はともに低調であったが,1989年は咽頭結膜熱だけが増加した(表1)。

 1988年1月〜1989年12月にヒトから検出されたアデノウイルスとして,1990年2月までに報告された検出数は合計2,134で,このうち1,705(80%)が地方衛生研究所からの報告,また,1,055(49%)がサーベイランス定点で採取された検体からの分離報告である。

 2,134例中1,905が型別された。最も多かった型は1988年,1989年ともに3型であったが,3型が過去最も多かった1987年に比べると報告数は両年とも3分の1

以下である(表2)。1988年に35型と40型,1989年に14型の検出が初めて報告された。

 アデノの主な型は例年夏季に検出が増加するが,この両年は全体的に検出数が少なく,3型以外は夏季の増加がめだっていない(表3)。

 アデノが検出された検体の種類(表4)は鼻咽喉材料が最も多く,ついで眼ぬぐい液,便である。型によって分離材料に差がみられ,主に1,2,5型は鼻咽喉と便,3型は鼻咽喉,眼ぬぐい液と便,4型は眼ぬぐい液と鼻咽喉,6型は鼻咽喉,8,19,37型は眼ぬぐい液,11型は尿である。14型と35型の各1株は鼻咽喉から分離された。40,41型(エンテリックアデノ)は便からの検出報告である。

 検出方法は1〜37型の型別された例はすべて細胞培養である。一方,型未同定報告では229中細胞培養124,電顕91,ラテックス凝集反応14であった。40型2,41型6の検出例については,細胞培養が各1,型特異単クローン抗体を用いた酵素抗体法がそれぞれ1および5であった。細胞培養医以外の方法はいずれも便からの直接検出である。

 アデノ検出例の年齢(表5)は1,2,5,6型は0〜4歳が多い。3型は大部分9歳以下であるが,約8%の報告が20〜30歳代にみられた。4,11型は9歳以下と20〜30歳代がほぼ同数,8,19,37型は成人が70%以上を占める。

 アデノウイルス検出例について報告される臨床症状はきわめて多彩である。不詳を除く1,725例中多くみられた症状は発熱58%,上気道炎54%,角・結膜炎29%,胃腸炎19%,下気道炎・肺炎5%などであった。

 上気道炎の症状ありで鼻咽喉からアデノが検出された例は846で,うち0〜4歳が67%,5〜9歳が27%を占める。主な型は3,2,6,1,5型である(表6)。

 角・結膜炎の症状ありで眼ぬぐい液からアデノが検出された例は356で,うち9歳以下29%,10代10%,20代19%,30代21%,40歳以上20%であった。主な型は3,8,19,4,37型である(表7)。

 胃腸炎の症状ありで便からアデノが検出された例は215で,うち0〜4歳が84%を占める。主な型は1,2,5,3型および41,40型である(表8)。



表1.年別咽頭結膜熱と流行性角結膜炎患者発生状況1987〜1989年
表2.年別アデノウイルス検出状況(1980〜1989年)
表3.月別アデノウイルス検出状況(1988年1月〜1989年12月)
表4.検体の種類別アデノウイルス検出状況(1988年1月〜1989年12月)
表5.アデノウイルス検出例の年齢分布(1988年1月〜1989年12月)
表6.鼻咽喉からアデノウイルスが検出された上気道炎症状のあった例の年齢(1988年1月〜1989年12月)
表7.眼ぬぐい液からアデノウイルスが検出された角・結膜炎症状のあった例の年齢(1988年1月〜1989年12月)
表8.便からアデノウイルスが検出された胃腸炎症状のあった例の年齢(1988年1月〜1989年12月)





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