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Vol.10 (1989/12[118])

<国内情報>
今季インフルエンザウイルス検出状況


東京都:A(H32)型

 東京都では,11月4日八王子市の中学校(総在籍数18学級)で,発熱,咳,咽頭痛等を主症状とするインフルエンザ様疾患による生徒の欠席が増え,学級閉鎖があったため,該当生徒5人からうがい液を採取し検査を実施した。その結果,インフルエンザウイルスA香港(H32)型1株を検出した。

 都内における学級閉鎖の状況は11月24日までの累計(都教育庁調べ)で小学校2校2学級,中学校2校9学級,その他1校2学級である。



東京都立衛生研究所



横浜市:B型,A(H32)型

 横浜市では,11月14日に市内で今シーズン初めての集団かぜが発生した。市内北東部・緑区の市立小学校第2学年の1クラスの児童30人のうち延べ16人が欠席し,16日までの3日間,同クラスを学級閉鎖した。患者のうがい液からのウイルス分離を試みたところ,5人中2人からB型ウイルスを検出した。

 一方,11月20日にはサーベイランス調査で市内北東部の2定点の検体から3株のインフルエンザウイルスが検出された。即ち,鶴見区の定点からは7人中1人からA(H32)型ウイルスが,他方の緑区定点からは7人中2人からB型ウイルスが検出された。

 本市においては,サーベイランス定点ウイルス調査において前季のA(H11)型ウイルスの流行が終息した頃の1989年2月から4月初めにかけて計8株のB型ウイルスが検出されている。

 このうち6株は1985年の流行株とはかなりずれがみられた。残りの2株(少数株)は本市における過去の流行株のいずれとも反応せず,B/Norway/1/84にのみ反応がみられた。これは国立予防衛生研究所の調査結果から,抗原的にはB/山形16/88に対して非常に近い株であることが判明した。

また,本年9月11日に市内南部の栄区の定点から3株と,18日の緑区の定点から1株のインフルエンザA(H32)型ウイルスを検出したが,これらの結果については病原微生物検出情報月報第10巻10号(116号)で報告した。

 今回検出されたB型株4株とA(H32)型1株について,抗原性状の解析を行った。抗血清は,横浜市でのかつての流行株を免疫したものと日本インフルエンザセンター配布の1989/90年度診断用標準キットを使用した。

(1) B型ウイルスの抗原性状(表1)

 4株(B/横浜/9/89〜B/横浜/12/89)とも前季検出の少数株と同様に,過去の横浜流行株に対しては16倍以下であった。B/Norway/1/84に対しては256倍の抗体価であったが,B/山形/16/88に対して64倍〜128倍と更に低い値を示した。

(2) A(H32)型ウイルスの抗原性状(表2)

 11月20日の定点調査から検出されたA/横浜/18/89株は,9月に検出された株に類似しており,1985年の流行株A/横浜/2/85に最も近く,A/北海道/20/89,A/四川/2/87,A/横浜/9/83と次第にずれがみられた。

 参考までに11月に検出された5株の背景を表3に示した。

 本市において,この時期に2種類のウイルスが混在していることや,特にB型株は過去の横浜流行株から大きくずれがみられることなどから,両者の混合流行の可能性が十分考えられる。しかし,現在の時点での判断は早計と思われるので,監視体制を一層強化して,今後の推移を見守ってゆきたい。



横浜市衛生研究所 小島 基義,野村 泰弘,竹内 利江,小林 伸好



神戸市:A(H11)型

 神戸市では10月24日にインフルエンザ様疾患の散発例から採取した咽頭ぬぐい液からインフルエンザウイルスA(H11)型を分離した。患者は東灘区在住の36歳男性会社員,10月24日発病,発熱(38.8℃),咽頭痛,咽頭発赤,頭痛,悪心があった。ウイルス分離にはMDCK細胞を用いた。

 分離株はワクチン株(A/山形/120/86)の抗血清(ホモ価1:>1,024)に対しHI価1:128を示し抗原性の差異が示唆された。



神戸市環境保健研究所



横浜市表1.B型ウイルスの抗原性状(HI試験)
横浜市表2.A(H32)型ウイルスの抗原性状(HI試験)
横浜市表3.検出株患者の背景





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