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Vol.10 (1989/11[117])

<国内情報>
愛知県における感染症サーベイランスウイルス分離情報−Cox.A9型ウイルスの流行


 当県では8月頃までのサーベイランスの検査がほぼ終了しましたので現在までの検査の集計結果を報告します。

 現在までのところ684名の検体1,191件を検査し,186株(27.2%)のウイルスを分離しました。本年夏の特に目立ったウイルスはCox.A(CA)9型ウイルスで72株分離され,全分離ウイルス38.7%を占めていました。地域別には尾張,三河の県下全域で分離されています。

 CA9は過去にもしばしば分離され,当県では1969年(22株),1982年(19株),1986年(14株)に特に多く分離されています(表1)。しかし1969年にはECHO(E)17(29株),Cox.B(CB)1(39株),1982年にはCB3(41株),CB4(20株),1986年にはE7(210株)等の流行のために陰に隠れた存在でした。流行の主流になったのは今回が初めてです。

 CA9は1989年の4月から分離され,7月がピークとなりました(表2)。

 CA9が分離された患者の疾患は無菌性髄膜炎42株,発疹症18株等でありました。特に無菌性髄膜炎は分離ウイルスの71.2%がCA9で,今年の無菌性髄膜炎の流行の中心ウイルスであったと思われます(表3)。

 CA9分離患者の検体別ウイルス分離率は糞便57/62(91.9%),咽頭ぬぐい液48/67(71.6%),髄液3/37(8.1%)でありました。

 CA9分離患者を年齢別に見ますと(表4)無菌性髄膜炎は4〜5歳をピークに6〜11歳まで幅広く出ていますが,発疹症は1歳が最も多く,5歳以下に限られていました。CA9の流行は今のところ全国的なものではないようですが,今後どのような広がりを見せるか興味のあるところです。



愛知県衛生研究所 栄 賢司,山下 照夫,石原 佑弌,磯村 思无


表1.Cox.A9型ウイルスの年別分離数
表2.Cox.A9型ウイルスの月別分離数(1989年)
表3.Cox.A9型ウイルスの疾患別ウイルス分離数
表4.Cox.A9型ウイルスの疾患別・年齢別ウイルス分離数





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