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Vol.10 (1989/11[117])

<特集>
細菌性胃腸炎 1989年


 今年の夏季の胃腸炎原因菌の検出状況は例年と異なった様相を呈している。

 表1に主な原因菌の年別検出数を,図1に輸入例を除いた国内例について1989年の月別検出数を過去5年間の平均と比較して示した。サルモネラO9群,ウエルシュ菌,コレラO1の9月検出数が平均を大幅に上回ったのが特徴的である。

 サルモネラは細菌性食中毒の原因菌として夏季に検出数が多く,とくにS.typhimurium(O4)が例年首位を占めている (本月報第9巻7号125頁)。 本年のO4群検出数のピークは5月にあるが,これは福岡県で集団発生354例からO4群(型不明)が分離されたためである。O4群の6月〜9月の検出数は平均を下回った。O8群は昨年以来検出数が増加しているが,集発からの分離菌型は昨年はS.hadarが,今年はS.litchfieldが多い。8月〜9月に目立って増加したのがO9群で,S.enteritidisによる集発事例が多数報告されている(表2および 本月報第10巻10号参照)。O9群の月別報告機関別の検出状況を表3に示した。

 腸炎ビブリオは食中毒原因菌の中で例年,事件数,患者数とも首位を占めていたが,昨年の患者数は2位に留まった(表4)。本年も集団発生は9月に集中し (本号参照), 検出数は平均を上回ったものの,大規模の集発がなかったため,1985年の検出数には及ばなかった。

 例年5月〜6月に見られるカンピロバクター検出のピークは今季は7月にあった。東京都の小学校給食による大規模集発の影響と思われる。

 黄色ブドウ球菌による食中毒は事件数,患者数とも例年上位を占める。今季の発生もほぼ例年どおり推移した。

 ウエルシュ菌は9月現在で既に1983年以来の年間検出数を上回った。3月,5月,9月のピークはいずれも給食を原因とする集発関連からの検出数の増加による。

 厚生省結核・感染症対策室によると,本年のコレラ発生は10月20日現在40件,患者総数92名で,うち88名からコレラ菌O1(コレラ毒素産生)が検出された。本年は海外渡航歴のない国内発生患者が63名(68%)を占めたが,そのうち57名が9月の発生である。9月には名古屋市で発生し1都6府県に及んだ集発,および滋賀県での集発があったために検出数は著しく増加した (本号参照)



表1.年別検出数(地研・保健所集計)
図1.月別検出状況(地研・保健所集計)
表2.S.enteritidisによる集発事例 1989年
表3.月別報告機関別サルモネラO9検出状況
    1989年1〜9月国内分(地研・保健所集計)

表4.1988年の食中毒発生状況
    (昭和63年食中毒統計・厚生省統計情報部)






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