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Vol.10 (1989/10[116])

<特集>
溶血レンサ球菌感染症 1987〜1988年


 感染症サーベイランスにおける溶連菌感染症の大部分はA群レンサ球菌によるもので,咽頭炎,アンギーナ(発疹を伴わないものを含む)を主体としている。患者の発生は,三峰性のパターンが1985年以後定着している(図1)。すなわち,8月の第32〜35週が最低で,秋から冬にかけて増加し,第46〜50週に最高となり,年末年始と春にやや低下する。患者の年齢分布は毎年ほぼ同様で,5〜9歳が約半数,1〜4歳が約4割を占める。1987年から1〜4歳の年齢群が1歳階級で集計されるようになった。その結果は,4>3>2>1歳の順を示し,3歳以上の幼児・学童が中心であることが一層はっきりとなった(図2)。

 定点当たり年間報告数は全国でみると,最高が1983年の28.1,最低が1987年の21.2で,ほとんど増減していない。しかし,ブロック別にみると,1987〜88年は北海道が増加したのに対し,関東甲信越,東海北陸,近畿,九州沖縄は減少した(図3)。

 T型別A群レンサ球菌検出状況を年別にみると,主要菌型であったT-12型が1980年以降減少を続けており,1987〜88年はT-4型に首位の座を譲った。1984〜86年に増加したT-3型は1987〜88年に減少し,T-1,4,6型が1987〜88年に増加した(図4)。医療機関集計ではA群検出報告の一部分のみしか型別されていないが,型別された成績は地研・保健所の成績とおおむね同じ傾向である。

 T型別とM型別の関連については本号参照。

 薬剤耐性について,東京都立衛生研究所で実施された成績(第22回レンサ球菌感染症研究会,1989年)によると,1985年以降多剤耐性菌はめだって減少したが,TC単独耐性菌は減少していない(図5)。特にT-12型では耐性率の減少と検出数の減少が平行して推移している。

 表1に1982〜88年の群別レンサ球菌検出数をまとめた。地研・保健所ではA群が主で検出数は減少傾向にあるのに対し,医療機関では検出数が毎年増加するとともにB群の占める割合が急増し(1982年25.1%,1988年47.5%),1987年以降B群がA群を上回っている。

 広島県衛生研究所の成績(第22回レンサ球菌感染症研究会,1989年)によると,A群は咽頭粘液からの検出が8割を占めるのに対し,B群は尿が34%,膣分泌液が13%を占め,非呼吸器疾患との関連が高い。医療機関集計のB群レンサ球菌については,この点を明確にするために,本システムにおいて,1990年1月から,血液,喀痰・気管吸引液および下気道の材料,陰部尿道頸管擦過(分泌)物など,菌が分離された材料別に検出数を収集するよう報告方式を変更することが予定されている。



図1.溶連菌感染症患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.溶連菌感染症患者年齢分布(感染症サーベイランス情報)
図3.ブロック別溶連菌感染症患者発生状況 1982〜1988年(感染症サーベイランス情報)
図4.年別型別A群レンサ球菌検出状況 1979〜1988年
表1.年別レンサ球菌検出数,1982〜1988年
図5.A群レンサ球菌の耐性パターンの年次推移 1978〜1988年
    (第22回レンサ球菌感染症研究会,1989年)

図6.レンサ球菌群別の材料分布(対象病院1987〜1988)
    (第22回レンサ球菌感染症研究会,1989年)






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