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Vol.10 (1989/8[114])

<国内情報>
レンサ球菌検出状況(医療機関集計1982〜1988年)の推移・特にB群レンサ球菌の増加傾向について


1982年1月から全国的に医療機関の病原細菌検出状況の収集が始まり,すでに7年が経過した。この間,病原細菌の検出情報数は毎年増加し続け1988年の総数は10万件を越えた。そのなかでレンサ球菌の検出数は3割弱に達し主位を占めている。広島県においてもレンサ球菌は検出菌種のうちの主要菌種となっており,最近3年間では肺炎桿菌に次いで2位を占めているが,その群別の検出状況は,当初のA群優位から最近ではB群がこれに代わる傾向にあり,わずかながらC,G群の検出数が増加している。そして,群不明は減少するという様相を見せている。

広島県および全国の医療機関における過去7年間のレンサ球菌検出状況について臨床情報(溶連菌感染症)も併せて月別(図1・2)および年別(図3・4)にその推移を検討した。溶連菌感染症は年間の変化が二峰性から三峰性になり,発生件数はほぼ横ばいの状況であるが,本県においては1988年に少し増加している。A群レンサ球菌の検出状況は臨床情報とほぼ同じパターンで推移しているが,検出数は増加しており,全国集計では当初に比べると約2倍半に増えている。それに対してB群の検出状況は一定の季節変化が認められないが,検出数の増加の傾きはA群よりも著しく,1987年にA群を追い越し,その後も増加傾向が続いている。これらを報告機関別にみると,それぞれA群に代わってB群の比率が高くなっている所が多く,これまで群別に検出数の多かった報告機関の推移をみても(図5),A群優位の山形,群馬,新潟の他はB群が優勢となってきている。

図6に全国の地研・保健所のレンサ球菌の検出状況を示した。こちらはA群レンサ球菌の検出数がB群のそれと比べて圧倒的に多く,レンサ球菌の検出数は毎年減少しており,医療機関の推移に比べて対照的であった。

 以上のことに関連して,本県の医療機関の一部について分離レンサ球菌の群別・臨床材料別分布をみると,A群は咽頭粘液から,B群は尿,膣分泌液,喀痰等から検出される割合が高いことから,B群レンサ球菌検出数が増加した一因は,医療機関におけるレンサ球菌検出の領域が各種疾患に及んできた結果であろうと推察される。

注)1988年については暫定数(病原微生物検出情報月報および感染症サーベイランス週報から収集)



広島県衛生研究所   榊 美代子,宮崎 佳都夫,武井 直巳
広島中央女子短期大学 西尾 隆昌


図1.広島県のレンサ球菌検出状況(医療機関集計)と臨床情報の推移
図2.全国のレンサ球菌検出状況(医療機関集計)と臨床情報の推移
図3.広島県のレンサ球菌検出状況の年別変化(医療機関集計1982−1988)
図4.全国のレンサ球菌検出状況の年別変化(医療機関集計1982−1988)
図5.報告機関別のA群とB群レンサ球菌検出状況(医療機関集計1982−1988)
図6.全国のレンサ球菌検出状況の年別変化(地研・保健所集計1982−1988)





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