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Vol.10 (1989/4[110])

<外国情報>
流行性髄膜炎の疫学と制御−英国


 Neisseria meningitidisは細菌性髄膜炎の起因菌の1つであるが,英国では1984年から本菌による流行性髄膜炎の流行期に入っている。

 1988年の菌型分布はB群菌が全分離株の61%,C群菌は35%(1984年は27%で微増傾向),A群菌は2%以下であった。1987年分離株のサルファ剤耐性菌の比率は,A群94%,B群36%,C群39%であった。年齢別では新生児の発生が最も多く,次いで1〜5歳となっている。最近のB群 15 P1.16菌およびB4菌による流行では10代の発生が増加している。死亡率は約10%。感染経路は健康保菌者の飛沫あるいは接触による例が多い。CDSCに報告された二次感染者の解析によると,接触後2日以内の発病が最も多く,遅い場合は1〜15ヵ月後の例もある。

 PHLS細菌性髄膜炎ワーキンググループでは流行制御のために以下の勧告を出している。@治療:疑わしい患者にはただちにベンジルペニシリンの静注を行う。A患者の発見と診断:治療開始前に血液あるいは咽頭培養を行い,分離菌はセンターに送付し群別と薬剤感受性試験を行う。B接触者の管理:患者家族に発熱者あるいは頭痛を訴える者が出た場合,接触感染の可能性が高いのでただちに医師に相談するよう指導する。C予防内服:患者との濃厚接触者にはリファンピシンの予防内服を行う。D接触者からの菌検出:濃厚接触者には予防内服後4〜7日に咽頭スワブ培養を行い,菌が検出されたらなお予防内服を続ける。Eワクチン:A,C,W135およびY群菌の多糖体ワクチンが開発されているが,防御効果は5歳までとされている。英国ではAおよびC群菌による髄膜炎の発生が有意に高い施設などに限って予防接種を行う。F公衆衛生上の予防対策:臨床医,細菌学者,公衆衛生担当医がお互いに連携を保つことで,疑わしい患者(菌血症患者を含む)の早期発見と早期報告に基づいた予防措置が採られる。

(CDR,89/08,1989)






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