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Vol.10 (1989/2[108])

<国内情報>
愛知県におけるECHO18型ウイルスの流行


1966年から行っているエンテロウイルスを中心としたサーベイランスの中で,私達はECHO18型ウイルスの流行を2回経験した。

前回の流行は1981年をピークとして1980年から1983年の4年間にわたって合計26株を分離した。その後4年間分離はなかったが,今回1988年に再び流行し,75株を分離した。ECHO18型ウイルスが分離された患者の疾患は前回の流行では無菌性髄膜炎が主だったが,今回は発疹,無菌性髄膜炎,不明熱性疾患が主な疾患だった。

検体別にウイルス分離率を見ると,糞便からは前回83%,今回98%だった。しかし,咽頭からは前回は89%だったが,今回は40%だった。髄液からは前回9%,今回は0だった。

ECHO18型ウイルスを分離した患者の平均年齢は前回は6.5歳だったが,今回は2.5歳と低年齢化していた。しかし,今回の流行を詳細にみてみると,発疹の平均年齢は1.6歳だが,無菌性髄膜炎患者は5歳,不明熱性疾患は0歳だった。

血清学的には標準株と81年分離株,88年分離株の間に差はなかった。

以上のことから,前回の流行は少なくとも14年間流行がなかったため,乳幼児から学童まで幅広い年齢で流行があり,無菌性髄膜炎が多かった。したし,今回は前回の流行から4年しか経ておらず,ウイルスの抗原変異もなかったために,流行の中心は乳幼児となった。一般にエンテロウイルスは乳幼児では発疹症を起こし易いといわれていることから,今回の流行が乳幼児中心であったために発疹症が多かったものと思われる。前回の流行と今回の流行の規模を比較してみると,前回の方が感受性者も多く,咽頭からのウイルス散布も多かったものと思われるのに大きな流行にいたらなかった。今回の流行が前回の流行から4年しか経ていないのに大きくなった原因はわからない。



愛知県衛生研究所 栄 賢司,山下 照夫,石原 佑弌,磯村 思无


表1.ECHO18型ウイルス疾患別・年別分離数−愛知県
表2.ECHO18型ウイルス分離者の疾患別・年齢別分布−愛知県





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