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Vol.9 (1988/8[102])

<国内情報>
長野県におけるA型肝炎の散発例について


 1988年4月下旬に,県内の南部にある飯田市のK病院より,A型肝炎(以下HA)患者が例年になく多くみられるという連絡があった。集団発生が疑われ,流行状況を把握するため管轄保健所を通じて,検体採取と疫学調査を実施した。

 患者と貝類の摂取状況を表に示したが,3月中旬から5月にかけて,K病院で8名のHA患者が認められた。bS,5,6の患者は同一家族の感染であり,他は散発発生であった。HAの診断は病院にて,IgM型HA抗体測定(ELISA法)により行われていたが,当研究所に5名の患者の血清が搬入された。この検体について同じ方法で検査したがすべて陽性であった。発症してから1ヵ月後に採取した4名の糞便について,電顕法によるHAウイルスの検出を試みたが,結果は陰性であった。患者の問診票によると,発症する1〜2ヵ月前に6名の患者がカキを,1名がアサリを摂取しており,感染源として貝類の関与が考えられた。bUの患者は2歳の幼児であり,貝類を摂取しておらず,bS,5の両親から二次感染して発症したものと思われる。また,家族感染例を除いた5名の患者は,相互に接触がなく,貝類の摂取時期や産地に一致性がないことから,集団発生は否定された。患者の症状をみると,倦怠感,発熱(39〜40℃),黄疸が主であり,有症期間は6名が1ヵ月以上に及び,入院治療を受けていた。そのうちの1名は劇症肝炎に至った重症例であった。

 県内のサーベイランス患者情報によると,昨年のHAの患者数は,16名と報告されている。このことから,短期間に一地域で8名のHAの患者発生は多い例と思われる。



長野県衛生公害研究所 西沢修一 中村和幸 小山敏枝








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