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Vol.8 (1987/7[089])

<国内情報>
クラミジア・トラコマチスの検索状況について


 STD関連疾患の中でクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis以下C. trachomatis)症は潜在流行を来たしているといわれているが,新潟県でもその実態解明の一端として,昭和61年から新潟市内の医療機関(泌尿器科,産婦人科)に依頼し,受診者のC. trachomatisの保有状況を検索したので,検査成績の一部を報告する。

 材料採取および検査方法はレファレンスシステム研究班の「クラミジア検査法」によった。

 成績は表のとおりであるが,昭和61年のAは泌尿器科,B,Cは産婦人科で,それぞれ検体数が異なるためにC. trachomatisの浸淫度の把握に至らなかったが,総検査数72例中,IF法で陽性を示したもの29例(40.3%),分離培養陽性32例(44.4%)とかなりの感染率が認められた。また,年齢構成別の検査数,陽性数をIF法でみると,19歳以下1/10例(10%),20〜30歳13/27例(48.1%),31〜40歳11/23例(47.3%),41〜50歳4/9例(44.4%),50歳以上1/3例(33.3%)であった。

 一方,昭和62年から感染症サーベイランス事業の対象疾病に陰部クラミジア症が新しく加えられたことから,新潟県でも県内に16検査定点を設置してSTD関連疾患の検索を進めているが,昭和62年5月までの検査成績を表に示した。表中A定点は前年に引き続き,通年調査として継続実施しており,IF法で23/23例(100%)と,得られたすべての検体からC. trachomatisが検出された。陽性率が異常に高い理由として,A定点ではSTD関連の受診患者のほぼ90%が,C. trachomatis症と診断されており,診断確定した患者のみを対象に検体採取しているためと考えられる。しかし,他の3定点でも14/17例(87.4%)と高率に検出されていることからC. trachomatis症は潜在的に流行蔓延しているものと考えられる。

 なお,分離株の血清型別は,現在マウス抗血清を作製中で未同定である。



新潟県衛生公害研究所 阿部 昭也


 クラミジアトラコマチス検査成績





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