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Vol.8 (1987/6[088])

<外国情報>
腸管伝染非A非B肝炎−東アフリカ


 1985および86年にスーダンとソマリアのエジプト人のための難民キャンプで非A非B肝炎が流行した。

ソマリアでは1985年1月〜86年9月に4難民キャンプで合計2,000例以上(死亡例87)が発生,死亡例の46%は妊婦だった。肝炎の成人時点有病率は3%,攻撃率(4〜6月)は8%に対し,15歳以下では0.2%と1.8%。また,攻撃率は国内スタッフ17%に対し,海外医療スタッフは42%だった。血清検査で患者9/84と対照2/50がHBs抗原陽性,抗HAIgMは全員陰性。肝炎発症1週以内の便材料について13/21 に免疫電顕で,中央アジア,ネパール,ビルマの例と同様の27nmウイルス様粒子が認められ,パキスタンの腸管伝染非A非B肝炎患者の血清と交叉反応した。

スーダンのエチオピア人難民キャンプの流行は1985年6〜10月で,これは大雨の6週後に始まった。患者は15歳以上が66%,5歳以下は6.3%にすぎなかった。致死率平均3.1%,死亡63例中11は妊婦だった。患者血清175例中7がHBs抗原陽性(うち1が抗HBcIgM陽性),他に抗HBcIgMのみ(最近の感染を示唆)が3例みられた。また11は抗HAIgM陽性でA型肝炎の感染が認められた。残り154患者は非A非B肝炎とみなされ,患者のプール血清は既知のパキスタン患者の便材料と交叉反応を示した。

非A非B肝炎には輸血後などにみられるHB型と経口感染によるHA型に区別しうる。後者はインド亜大陸,ビルマ,アルジェリアで大流行したことがあり,汚染した水または大雨によって発生,ヒト−ヒト感染が起こる。特徴的疫学像は,潜伏期40日(HAは30日,HBは60〜180日),発症はふつう大人で,子供は少ない。妊婦の高致死率が著明である。臨床症状は他のウイルス性肝炎と類似だが,全身的そう痒感がより多い。妊婦以外は完治し,慢性肝臓疾患の後遺症はない。診断は疫学的および他のウイルス肝炎を除外する血清検査による。最近,便材料中の27〜30nm粒子で2種類のサルに肝炎の発生がみとめられた。

 流行阻止には加熱または塩素による水の消毒,衛生状態の改善を行う。西側で作られた免疫グロブリンは効くようにはみえない。流行地からの免疫グロブリンの効果は不明。

(CDC,MMWR,36,16,1987)






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