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Vol.8 (1987/3[085])

<国内情報>
アデノウイルス34型および35型の血清型同定と抗血清の分与について


アデノウイルス34型およびアデノウイルス35型はそれぞれ1972年および1973年に,ともに腎移植を受けた後に発病した患者の尿あるいは剖検材料から分離,発見されたウイルスである。その後,AIDS患者の尿などからの分離報告例がある。

予研ウイルス中央検査部では,必要に応じてアデノウイルス同定用抗血清を作成,分与業務を行っている。今回上記のウイルスに対する免疫血清を家兎で作成し,交叉中和試験を行ったところ,アデノ34型とアデノ35型の間では米国CDCから分与を受けた標準抗血清も含めて,高い中和交叉が見られ,中和試験による型判別は非常に困難であることを確認した。一方,数種類の制限酵素によるDNAの切断パターンをあわせて検討した結果,少なくとも標準株は切断パターンの差によれば識別が可能であった。しかし,これらの血清型は中和試験による型判別が容易でない事実,ならびにDNAの切断パターンからも単なるstrain variationとも受け取れる結果であった。

以上の知見にもとづき,アデノウイルス34型および35型の同定においては,分離ウイルス株が抗アデノ34型および抗アデノ35型血清でともに中和された場合には,アデノウイルス34型/35型とすることを提案する。



アデノウイルス34型および35型の中和試験同定用抗血清が分与可能です。同定には5単位を使用し,どちらか単独の型の抗血清で中和された場合はそれぞれアデノ34型またはアデノ35型と判定し,抗アデノ34型および35型血清でともに中和された場合にはアデノ34/35型として下さい。病原微生物検出情報の報告にあたっては,アデノウイルス34/35型の病原体コードは新しいコード「10190」を記入してください。

抗アデノウイルス34型および35型同定用抗血清の分与については予研ウイルス中央検査部・吉井孝男または志賀定祠に連絡してください。



国立予防衛生研究所 吉井 孝男
予研・ウイルス中央検査部





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