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Vol.6 (1985/9[067])

<外国情報>
集中治療室の看護員におこったパラヘモリチカス菌(Haemophilus parahaemolyticus)性咽頭炎の流行−英国


1985年2月,集中治療室の看護婦1名が咽頭炎に罹患し,開業医によってセファレキシンの5日間経口投与を処方された。症状が消失しなかったのでさらに5日間コトリモクサゾールの経口投与を受け,いくらか改善した。症状が再発した時咽喉拭い液を採取して菌培養をおこなった。大部分は溶血性の連鎖球菌類似の混合したコロニーがみられた。7%炭酸ガス中18時間培養で,5%ウマ血液寒天上に約3mmのβ溶血帯をともなう直径約1mmの透明な集落が現れた。この細菌はランスフィールド連鎖球菌群別抗血清と反応せず,グラム染色写真では多型性のグラム陰性桿菌(約0.5×1μm)で,H. influenzaeより明らかに大きく,不規則に染色され,あるものは両端染色を示した。この菌はオキシダーゼ弱陽性で,コロンビア寒天に植え継ぐと発育にV因子を要求した。発育は空気中では貧弱だが,炭酸ガス(7%)が存在すると促進された。分離株はアンピシリン,エリスロマイシン,テトラサイクリン,サルファメトキサゾールとトリメトプリムに感受性だが,ペニシリン耐性のH. parahaemolyticusとして報告された。

引き続き10日の間に同じ集中治療室で働く他の5人の看護婦が咽頭炎をおこし,うち3人の咽喉拭い液から上記分離株に類似の溶血性V依存型ヘモフィルスが得られた。細菌は混合培養中に存在しており,うち2例においては正常細菌叢の方が支配的であった。もしも検査室員が最初の分離株の臨床的状況に気づいていなかったとしたら,これらは見逃されていたかもしれない。細菌が分離された4人の看護婦全部に中等度に咽頭炎と不快感が記載されており,エリスロマイシン,アンピシリンあるいはコトリモクサゾールによる約10日間の抗菌剤療法に迅速に反応し,その後再発しなかった。治療室にいた患者は1人も同様症状を示さず,患者全員の細菌学的検査はなされなかった。

(CDR,85/25,1985)






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