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Vol.6 (1985/9[067])

<国内情報>
千葉県内のロタウイルス検出状況について


ロタウイルスは,冬期に多発する乳幼児下痢症の主要な病原体であることが明らかにされている。また,学童や成人でも感染がおこることが知られているが,その報告例は少ない。

千葉県では,感染症サーべイランスの一環として急性胃腸炎患者のウイルス検索を行ってきたが,その結果,成人のロタウイルス罹患例が多くみられたので報告する。

材料は,1982年10月から1984年6月までに県内T病院から得られた499例の糞便を用いた。方法は,ELISA法(市販キット)と電子顕微鏡観察を併用した。

結果:ロタウイルスは499例中49例から検出された。そのうち41例は10月から4月にかけての流行期で,8例(乳幼児4例,小児2例,成人2例)は夏季にみられた。

年齢群別の検出状況を図1に示した。ロタウイルスは乳幼児だけでなく,成人までの幅広い年齢層から検出され,最高年齢は67歳であった,年齢別の検出状況を明らかにするため,10月から4月にかけての流行期のみについて,0〜5歳,6〜19歳,20歳以上の年齢群に分けて比較を行った。20歳以上の成人では,155例中25例(16.1%)と比較的高い検出率であった。0〜5歳では,41例中12例(29.3%)で,他の報告例に比べて検出率は低かった。これは,T病院が内科を主体としているので,乳幼児の患者が少なかったためと思われる。6〜19歳では,82例中4例(4.9%)と最も少なかった。

表1は,年齢群別に臨床症状をまとめたものである。0〜5歳では,発熱するもの,下痢の激しいものが多く重症であった。6〜19歳では例数は少ないが,嘔吐,嘔気の割合が高かった。20歳以上では嘔吐より嘔気の割合が高く,かつ悪感をともなったものが多かった。下痢症状は全体的に軽症であったが,中には1日10回もの激しい下痢を示すものもみられた。

なお,家族内感染と思われる症例が5例みられた。



千葉県衛生研究所 春日邦子,時枝正吉,太田原美作雄


図1.年齢群別ロタウイルス検出状況
表1.臨床症状





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