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Vol.6 (1985/7[065])

<国内情報>
山形県山間部の一学校に流行したA(H)型インフルエンザ(1985年5月)


今冬季(昭和60年1月〜2月)に流行したB型インフルエンザの流行は,3月に入ると患者数が減少し,まもなく終息した。ところが,5月20日,県南部の新潟県境に近い山間部の小国町の某高校で,発熱(38〜39℃),咳,咽頭痛,鼻汁過多および頭痛などを示すかぜ様疾患が集団発生したという情報が,当衛生研究所に寄せられた。

この高校では,調査を開始した時(5月21日)すでに在校生321名中241名が罹患し,罹患率は75%に達していた。患者は一週間ほど前から発生しており,私達が調査を開始した時が,患者発生のピークであった。これらの患者のうち病日の新しい7名から咽頭拭い液を採取し,発育鶏卵を用いてウイルスの分離を試みたところ,3株のA(H)型(A香港型)インフルエンザウイルスが分離された。ウイルス分離状況および患者血清のHI抗体価の変動は表に示した。本県においては,現在(6月下旬)までこの小国町の発生以外にかぜ様疾患の集団発生報告はなく,この流行は,この地域に限られ拡大しなかった。

一方,昨年暮れからの全国におけるインフルエンザウイルス分離状況をみると,A香港型は,奈良県(昭和59年12月),福島県(昭和60年2月),三重県(2月),神奈川県(2月〜3月),新潟県(3月)および岡山県(4月)の6県で検出され,今回の例を加えると7つの県で検出されている。

これらの事実は,活動しうるA香港型インフルエンザウイルスが日本のかなり広い地域に散布されたことを示唆している。このウイルスの今後の動向に注意する必要があり,現在,その調査を進めている。(東北六県防疫月報に掲載)



山形県衛生研究所 大山 忍 大泉昭子 片桐 進


ウイルス分離状況および患者血清のHI抗体価の変動





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